研究課題
油層環境の生物的原油分解メタン生成ポテンシャルを評価するため,東北日本地域の油ガス田から採取した原油の炭化水素組成をガスクロマトグラフ-水素炎イオン化検出器とガスクロマトグラフ-質量分析計 (現有設備) で分析した結果, 多くの原油ではn-アルカンが最も多い成分である一方,一部の原油(A油田)ではプリスタン,フィタンなどのイソプレノイドアルカンがn-アルカンよりも多く,原油生分解の影響が示唆された。またガス成分 (メタン~ブタンや二酸化炭素) の組成と炭素同位体比をガスクロマトグラフ-水素炎イオン化検出器とガスクロマトグラフ-燃焼-安定同位体比質量分析計 (現有設備) で分析した結果,特にA油田のガスにおいて二酸化炭素,プロパン,n-ブタンの炭素同位体比が相対的に高い特徴があり,炭化水素の生分解とメタン生成の影響が示唆された。さらに,微生物の生育に影響する油層水中の各種イオン (塩化物イオン,アンモニウムイオン,リン酸イオンなど) 、微生物の生理活性に関わる各種微量金属イオンやビタミン類、及びメタン生成菌と競合関係にある微生物の生育を支配する各種イオン(硫酸イオン,硝酸イオン,亜硝酸イオン,鉄イオン)の濃度を測定した。その他に,原油分解反応における最初の代謝産物であるアルキルサクシネートやベンジルサクシネートなどのアルカン誘導体,ベンゼン誘導体の油層水中濃度を ガスクロマトグラフ-質量分析計で測定し,原油分解メタン生成の兆候をより高精度に明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
「油層の地球化学的特性の分析を行い、現場油層環境の原油分解メタン生成ポテンシャルの評価を実施する」という平成29年度の目標を達成しており、平成30年度の研究で原油分解メタン生成微生物群を獲得するための高圧培養実験の対象となる油田が明確となっているため。
原油分解メタン生成ポテンシャルを有する油層を対象に,申請者が独自に開発した「現場の油層環境を模擬する高圧培養システム」と現場油層試料(油層水と原油)を用いて,油層のメタン生成プロセスを実験室で再現し,原油分解メタン生成微生物群を獲得(安定培養化)する。環境ゲノム解析技術等, 最新の分子生態学的手法を組み合わせたることにより, 獲得した原油分解メタン生成微生物群内で起こる代謝反応の全容を解明する。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻: 67 ページ: 3982-3986
10.1099/ijsem.0.002234
Scientific Reports
巻: 7 ページ: 15646(1-10)
10.1038/s41598-017-15959-5