研究課題/領域番号 |
17H01363
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
坂田 将 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 招聘研究員 (70357101)
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研究分担者 |
玉木 秀幸 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (00421842)
眞弓 大介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (30549861)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 油層 / 環境微生物 / 原油分解 / メタン生成 / 酵母エキス / トルエン / 長鎖ノルマルアルカン |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度と同様に油層環境を模擬するミクロコズムを構築し、あらたに酵母エキスが油層微生物の機能を活性化する効果を評価した。平成29年度の研究で判明した原油分解メタン生成ポテンシャルを有する油層から採取した水(微生物源)を嫌気状態を保ったまま1Lの高圧ステンレス容器に注入し、これに基質として滅菌処理を施した原油を、また栄養剤として数種の異なる酵母エキスのいずれか、あるいはコントロールとして無機塩培地を添加した。それぞれの系において、ヘッドスペースを窒素ガスで加圧し恒温槽に設置することにより、油層の温度・圧力を模擬した。培養の結果、酵母エキスを加えた系で多量のメタン生成量が観察された。メタン生成量は酵母エキスの種類によっても相違し、最も多い場合、無機塩培地添加系におけるメタン生成量の5倍にも達した。酵母エキス添加系におけるメタン生成量の増加は酵母エキス自体の炭素量よりも圧倒的に多く、原油成分がメタンに変換されたと考えられる。実際に培養前後の原油の炭化水素組成を比較した結果、すべての系でトルエンの減少が観察されるとともに、多量のメタン生成が観察された酵母エキス添加系では、炭素数が多い長鎖ノルマルアルカン成分も有意に減少していることが判明した。長鎖ノルマルアルカン成分の選択的分解は、好気条件でよく知らせているノルマルアルカンの生分解パターンとは逆である一方、嫌気条件で観察されている過去の研究結果と類似している。トルエンやノルマルアルカンの嫌気的分解のメカニズムとしてはフマル酸付加によるベンジルコハク酸やアルキルコハク酸への変換が知られており、今後、代謝産物や機能遺伝子の解析による検証が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
油層微生物がメタン生成に利用する原油成分が特定され、原油分解メタン生成メカニズム解析という平成31(令和1)年度目標を達成しているため。
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今後の研究の推進方策 |
原油分解メタン生成ポテンシャルがないと判断された油層を模擬するミクロコズムを構築し、これまでの研究で得られた原油分解メタン生成微生物集積系とその活性を高める効果的な酵母エキスを注入し、原油分解メタンプロセスを誘起する可能性を検証する。
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