研究課題/領域番号 |
17H01369
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
谷川 博康 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 六ヶ所核融合研究所 核融合炉材料研究開発部, グループリーダー(定常) (50354668)
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研究分担者 |
渡邊 誠 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 分野長 (00391219)
岸本 哲 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主席研究員 (10354169)
関 洋治 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 那珂核融合研究所 ITERプロジェクト部, 主幹研究員(定常) (00469793)
江里 幸一郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 那珂核融合研究所 ITERプロジェクト部, 上席研究員(定常) (30354624)
野上 修平 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00431528)
遊佐 訓孝 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60466779)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 摩擦撹拌処理 / 粉末底溶融結合法 / 粉末混入 / 超音波顕微鏡 / タングステン皮膜 / 熱応力解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、事故耐性の高いプラズマ対向材として不動態膜形成による耐酸化機能を付与された高強度W皮膜を開発することを最終目標として、摩擦撹拌処理(FSP)による皮膜強化と3Dプリンティング技術によるW合金成膜を併用した皮膜形成を試みる。 FSP処理による皮膜強化および不動態膜形成の探求においては、FSPによる粉末混入効果をっ検証すべく、プラズマ真空溶射(VPS)法によって製作された1mm厚さW皮膜に対して不動態膜形成を期待できるCrN、TaNおよびAl2O3を、放電加工によって作成した幅0.25mmの溝に装填し、FSPツールによる撹拌処理を実施した。 3Dプリンティング技術によるW合金皮膜形成の探求においては、粉末床溶融結合(SLM)法の条件の最適化を進めた。レーザ光源出力を昨年度の100Wから700Wに変更することで緻密化は進んだが基盤材との反応性が高くなったことから、基盤近傍では照射エネルギーを小さくし、基材から離れるにつれ段階的に照射エネルギーを大きくすることで、基板直上では反応層の小さなポーラス構造、離れるにしたがって密度の高くなるタングステン円柱構造を試作した。 皮膜健全性の非破壊評価法の開発においては、人工欠陥を界面に製作することを目的として、基板上に直径が0.1,0.5,2.0,5.0㎜、厚さ0.01㎜のタングステン円柱パターンをSLM法で作製し、これにVPS法により0.5mmのW皮膜を製作した上で、FSPにより撹拌処理を施した。これに対して超音波顕微鏡によるパターン検出の可否を評価したところ、50MHzプローブにより0.5mm以下の反射波のみを抽出することで検出可能であることを確認した。 熱負荷試験にむけた試験体熱応力解析においては過去に実施した試験体について再解析を実施したところ、最大想定温度に飽和するまで一定の熱負荷サイクル数が必要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3Dプリンティング技術によるW合金皮膜形成の探求においては、照射エネルギーを大きくすることで緻密化することが示せたが、界面反応層を最小限にするためには照射エネルギーを小さくする必要があり、その条件では必然的にポーラス構造を形成することが明らかになった。この界面近傍のポーラス構造はFSP処理により解消・強化できることが期待できるが、今後の検証が必要である。界面反応層の抑制には低温で溶射する必要があることから、W初層形成において、プラズマ溶射装置を用い、径の小さいノズルを利用することで低温高速フレーム状態とすることで、反応層を形成しないタングステンの成膜が大気中で可能か試みた。その結果、温度はタングステンの融点以下に保持出来ていたが、得られた皮膜は基材との密着性が弱く、成膜直後の冷却過程で剥離が生じた。XRD分析結果では酸化物ピークがほとんど検出されなかったことからタングステン粒子の飛行中の酸化抑制には成功していたことが明らかになった。今後、低温状態を維持しつつ、粒子速度の高速化を図ることで密着性向上を図る。 FSP処理による皮膜強化および不動態膜形成の探求においては、不動態膜形成が期待できる粉末の混入自体は可能な見通しを得たが、断面組織観察による詳細な評価が未実施であり、今後早急にすすめていく必要がある。 熱負荷・ICE試験と有限要素解析による皮膜の耐負荷性能の探求においては、CE試験装置には、水蒸気との接触時におけるW合金皮膜成形による酸化抑制効果を確認する為の放出ガス分析装置を導入することが出来た。また有限要素解析においては、熱負荷試験の設計指針を決める解析結果を得ることが出来た。 皮膜健全性の非破壊評価法の開発においては、人工欠陥を界面に導入したFSP強化 VPS-W皮膜を製作し、かつ欠陥パターンを超音波顕微鏡により検出できる見通しを得た。
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今後の研究の推進方策 |
W合金皮膜形成の大方針として、引き続きSLM法により溝を有するW膜を製作し、溝に充填したCrやAl、Ta等の不動態膜形成成分をFSPにより機械的に攪拌して合金化する手法を探求する。 3Dプリンティング技術によるW合金皮膜形成の探求においては、SLM法によるW皮膜形成条件の最適化を継続して進めるとともに、初層皮膜形成時の反応層形成を抑制するために、初層形成時はプラズマ溶射装置の低温高速フレーム状態でのW溶射を探求する。 FSP処理による皮膜強化および不動態膜形成の探求においては、従来FSP条件進行側の条件が後退側でも得られるFSP条件を検討する。さらに、溝を導入したVPS-W皮膜に合金元素を充填してFSP処理を行なった試料について詳細な組織分析を実施し、条件最適化の検討をすすめる。 熱負荷・ICE試験と有限要素解析による皮膜の耐負荷性能の探求においては、有限要素解析による熱負荷試験設計をすすめ、設計した試験体を、前年度に作成した人工欠陥を界面に導入したFSP強化VPS-W皮膜を用いて製作し、短時間サイクル熱負荷試験を実施する。また、同じく前年度作成した不動態膜形成成分をFSP処理により混入したW皮膜について、ICE試験を実施し、不動態膜形成効果を確認する。 皮膜健全性の非破壊評価法の開発においては、人工欠陥を界面に導入したFSP強化VPS-W皮膜に対して熱負荷試験を実施した後に、超音波顕微鏡等を用いて熱負荷試験によって導入された欠陥成長の有無について評価を行う。
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