研究課題/領域番号 |
17H01375
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
柳田 健之 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (20517669)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | シンチレータ / ドシメータ / 熱蛍光 / 輝尽蛍光 / RPL |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、蛍光体を用いた放射線計測を行うという目的が同じでありながら、異なる分野として発展してきたシンチレータ、および蛍光体型ドシメータの実験的な統合モデルを描く事である。このような目的を達成する為、材料系としてはバルク単結晶、透明/不透明セラミックス、ガラスを選択し、何らかのホストに0.1~10%程度の発光中心元素を添加した物質を合成し、その基礎的な光物性を計測した後に、シンチレーションおよびドシメータ特性を評価した。 例えばガラスを例に取った場合、本年度はEu添加BaO-Al2O3-B2O3に着目し、Eu濃度を変化させて、シンチレーション・ドシメータ特性の双方を観測し、シンチレーション特性の高い組成 (Eu 濃度) ではドシメータとしての特性は低く、ドシメータ特性の高い組成ではシンチレータとしての特性が低いという、反相関性を見出した。同様の反相関性は、単結晶およびセラミックスでは検証してきたが、ミクロスケールで秩序構造を有しないガラスにおいても成り立つ事を明らかにした。加えて従来は希土類発光中心を持つもののみを検討してきたが、より一般性を拡張する為、遷移金属添加物質にも着目した。Mnを異なる濃度添加したMgOを作製し、評価したところ、これまでと同様に反相関性を確認できた。以上のように、様々な物質形態 (ナノ、マイクロスケール)、発光中心において作業仮設であるエネルギー収支の反相関性を確認する事が出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を進めるうえでの作業仮説は、二次電子 (デルタ線、もしくは半導体分野におけるキャリア) の、発光中心と捕獲中心への分岐比がシンチレータもしくはドシメータとしての性能を規程するというものである。従来は希土類発光中心を有するセラミックスと単結晶にという、秩序構造を有する物質系においてのみこの仮説を検証してきたが、本年度は短距離秩序構造を有しないアモルファス (ガラス) においても同様の傾向 (シンチレーションとドシメータ用蓄積蛍光) の反相関性を確認する事が出来た。
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今後の研究の推進方策 |
より多様な物質、すなわち様々なナノ・ミクロスケールの秩序・ランダム構造におけるシンチレーションおよびドシメータ特性を観測し、どういった場合が反相関性が成立し、どのような場合は成立しない (すなわち多くの吸収した放射線エネルギーが熱失活する) かを明らかにする。合わせて共同研究などを通じて、逐次過程におけるダイナミクスや、光音響を用いた熱失活の定性的な評価を行っていきたい。
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