研究課題
本研究の目的は、蛍光体を用いた放射線計測を行うという目的が同じでありながら、異なる分野として発展してきたシンチレータ、および蛍光体型ドシメータの実験的な統合モデルを描く事である。このような目的を達成する為、材料系としてはバルク単結晶、透明/不透明セラミックス、ガラスを選択し、何らかのホストに0.1~10%程度の発光中心元素を添加した物質を合成し、そのシンチレーションおよびドシメータ特性を評価した。昨年度までは様々な材料系に、希土類元素もしくは遷移金属元素を添加した蛍光体の放射線誘起蛍光特性を調査したが、今年度はさらにns2イオンを添加した物質の特性を調査した。例えばTl+を添加したCsBrやCsCl単結晶や透明セラミックスの特性を調査したところ、昨年度までと同様にシンチレーションとドシメータ用蓄積型蛍光の反相関性を確認した。同様の傾向は、Sn2+やIn+など、他のns2イオンにおいても確認された。さらに副次的な成果として、様々な物質の放射線検出器特性を調べていく過程で、CsLiB6O10 (CLBO) 単結晶がガンマ線照射下で、64000 ph/MeV の高い発光量を有する事を発見した。ホウ素含有物質では発光量の高いモノが発見されてこなかったため、関連分野においては新たな知見が得られた事となる。これらの成果に基づき、本年度も客観的な研究への評価として、応用物理学会論文奨励賞、7件の指導学生の応用物理学会放射線分科会ポスター賞、2件の応用物理学会 Poster Award、2件の次世代先端光科学研究会若手奨励賞等を受けた。
2: おおむね順調に進展している
本研究を進めるうえでの作業仮説は、二次電子の、発光中心と捕獲中心への分岐比がシンチレータもしくはドシメータとしての性能に決定的に重要となる事である。昨年度までは希土類発光中心を有するセラミックスと単結晶という秩序構造を有する物質系、短距離秩序構造を有しないアモルファス (ガラス) においても同様の傾向 (シンチレーションとドシメータ用蓄積蛍光) の反相関性を確認し、仮説が秩序構造によらず成り立つ事を検証した。今年度は同様の研究を進めつつ、協力研究者らとの共同研究において、二次電子分岐における熱失活とシンチレーションもしくは蓄積蛍光に振り分けられるエネルギーが反相関する事も確認し、放射線吸収後のエネルギー分岐は、単純なエネルギー保存則を仮定した場合のシンチレーション、蓄積蛍光、熱失活の三通りに振り分けられることを検証した。
より多様な物質、すなわち様々なナノ・ミクロスケールの秩序・ランダム構造におけるシンチレーションおよびドシメータ特性を観測し、どういった場合に反相関性が成立し、どのような場合は成立しない (すなわち多くの吸収した放射線エネルギーが熱失活する) かを明らかにする。合わせて共同研究などを通じて、逐次過程におけるダイナミクスの評価を行い、無限時間積分した状況 (エネルギー保存に基づく本研究の骨子となる仮定) と時間微分した状況の整合性に関して検討を行いたい。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (39件) (うち査読あり 38件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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