研究実績の概要 |
蛍光体を用いて放射線を計測するという目標・手法が類似のものでありながら、シンチレータとドシメータ用輝尽・熱・RPL蛍光体の研究は、これまで全く別々の分野として発展してきた。我々は2014年、一般的なエネルギー収支を仮定した場合、シンチレータとドシメータ用蛍光体は発光強度において反相関性を示すという仮説を提唱すると共に、これを実験的に検証した (Yanagida, et al., Radiat. Meas., 71 162-165 2014)。しかしながらその検証は、Ce添加CaF2単結晶と一部のセラミックス材料に留まっていたため、この関係が一般化に成り立つ事を示す為には、多種多用な物質において、同様の関係性を観測する事が必要である。 本研究では、様々な材料系において反相関関係の検証を行った。特に2020年度には、従来の酸化物およびハライド単結晶・透光性セラミックスに加え、ハライド複合アニオン透光性セラミックス、酸素-ハロゲン複合アニオンガラスを作製し、これらの材料種でも反相関関係が確認され、本研究の大目的である一般性の検証に成功した。 研究の過程では、多くの新材料の発見や、素過程における発見がもたらされた。それらの成果は随時公表しており、成果を統計的にまとめると、2020年においては、査読付き論文 100 編、国際学会発表 11 件、国内学会発表 162 件、指導した学生らの受賞が5件である。 今後の課題としては、ナノメートルオーダーの局所構造において何が支配的となっているかを明らかにする事と、それを明らかにするために、放射線音響計測装置を開発し、同様のデータを集めて行く事と考えられる。支配要因を明らかにしたのちには、その知見に基づく材料設計を行い、革新的な性能を有する放射線計測用蛍光体を開発したい。
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