研究課題/領域番号 |
17H01376
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
児玉 竜也 新潟大学, 自然科学系, 教授 (60272811)
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研究分担者 |
金子 宏 宮崎大学, 工学部, 教授 (90323774) [辞退]
清水 忠明 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10211286)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 太陽熱 / 水素製造 / 熱化学サイクル / 水分解 / 反応器 / ソーラー水素 / 集光器 / 触媒 |
研究実績の概要 |
1) 流動層式ソーラー水熱分解器の開発 低温活性の反応性セラミック粒子の開発については、Mnドープセリアについてドープ量15mol%が最適であり、1250~1300℃での熱還元ステップ、1200℃での水分解ステップの2段階水熱分解サイクルにより、従来の非ドープセリアの4~8倍の反応活性が得られることが分かった。一方、Coドープに関しては30mol%が最適であり、上記の反応条件で非ドープセリアよりも高い活性が得られたが、Mn15mol%の活性には及ばなかった。これらドープセリアでは、従来の非ドープセリアが熱還元ステップ1400℃以上、水分解ステップ1000℃以下が必要であることと比較すると、熱還元ステップを低温化出来ているのに加え、反応ステップの温度差が大きく縮小されており、エネルギー効率を高めることができる。さらに、スプレードライ法により流動性の良い真球状セリアの合成条件を決定した。合成した真球状セリアでは従来のセリアの破砕球よりも非常に小さい最小流動化速度を得ることができた。また、100kWの流動層式ソーラー反応器についてはガス分散板等を改造して宮崎ビームダウン太陽集光システムで太陽集光照射試験を行い、十分な高温耐久性を確認した。さらに従来の破砕球セリア粒子を用いて30kW流動層反応器を大型太陽集光シミュレータで試験し、安定に酸素・水素製造のサイクル反応を繰り返せる流動ガスの制御条件を見出した。 2)発泡体デバイス式ソーラー水熱分解反応器 共沈法で合成したMnドープセリアで高い活性を得ているが、これを従来のスピンコート法でジルコニア発泡体に担持した場合、セリアのデバイスからの剥離が顕著であることが分かった。そこで新しい担持法として蒸発乾固法を考案した。まずは、蒸発乾固法によって共沈法と同等の低温活性を有するMnドープセリア粉末が得られることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
流動層式ソーラー水熱分解器の開発については、従来の非ドープセリアと比較して4から8倍の活性を有するMnドープセリアを見出している。また、スプレードライ法によって真球状セリアの合成法も確立できた。この2つの手法を組み合わせ、Mnドープセリアの真球状粒子を合成できれば本研究の最終目標である真球状ドープセリアの流動層ソーラー反応器試験を実施できる。 発泡体デバイス式ソーラー水熱分解器の開発については、共沈法で得られたセリアをジルコニア発泡体へスピンコート法で担持すると剥離が顕著であることが見出された。これに替わる方法として、溶液から直接、発泡体に担持できる蒸発乾固法を考案した。共沈法で合成した場合と同等の活性が蒸発乾固法で合成したMnドープセリア粒子でも得られることが確認されており、これによって問題解決できると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
1)流動層式ソーラー水熱分解器の開発 スプレードライ法によるMn15mol%ドープセリアの真球状粒子の合成を行う。また、Mn以外のドープ金属についても活性を検討する。同時にドープセリアの電子構造解析を行い、ドープ金属が低温活性を高める機構を推察する。100kWソーラー反応器については熱耐久性が確認されたので宮崎ビームダウン太陽集光システムを用いて水熱分解サイクルの反応試験を行う。 2)発泡体デバイス式ソーラー水熱分解器の開発 ドープセリアの発泡体デバイスからの剥離が顕著である問題を解決するため、従来のスピンコート法の合成条件を改良するのと並行して、新しく見出した蒸発乾固法によっても反応デバイスを作製する。作製したドープセリア担持反応デバイスを小型太陽集光シミュレータで試験し、耐久性が良く、低温活性の高い反応デバイスを開発する。これに成功した場合は、反応デバイスを大型化して作製し、韓国エネルギー研究技術院(KIER)の太陽炉に設置したソーラー反応器で反応試験する。
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