研究課題/領域番号 |
17H01390
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中島 欽一 九州大学, 医学研究院, 教授 (80302892)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | レット症候群 / エピジェネティクス / 神経幹細胞 / アストロサイト / マイクロRNA |
研究実績の概要 |
MeCP2 の遺伝子変異は、Rett 症候群(RTT)をはじめ、自閉症、統合失調症などを含めた様々な精神疾患・神経発達障害への関与が示唆されているものの、その発症機序の詳細は不明である。これまで、神経細胞におけるMeCP2 の機能異常がRTT 発症の原因と考えられてきたが、最近非神経細胞(グリア細胞)の機能異常がRTT 病態発症の一因である可能性が示唆され始めている。代表者は、MeCP2 がmicroRNA(miRNA)マイクロプロセッサーであるDrosha 複合体と結合し、miR-199aのプロセッシングを促進すること(Cell Reports 2015)、miR-199a はMeCP2 の下流で神経幹細胞のアストロサイトへの分化を抑制することを発見した(未発表)。本年度の研究では、miR199aの標的候補因子として同定した、Smad1が実際に標的となっていることをルシフェラーセ解析などにより明らかにした。また、MeCP2欠損神経幹細胞ではSmad1の発現が更新しており、Smad1のshRNAを用いたノックダウンにより、アストロサイト分化の亢進が正常化することも明らかにした。miR199a欠損アストロサイトがMeCP2欠損アストロサイト同様に、ニューロンの成熟を妨げることも確認できた。グリア機能性分子の探索に関しては、すでにRNA-seqを終了し、現在解析中である。さらにmiR199a過剰発現TGマウスも作製が完了し、B6マウスへのバッククロスもほぼ完了した。今後はこのマウスの表現型を観察するとともに、MeCP2欠損マウスとの交配を開始する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述のように、神経幹細胞分化に関するmiR199aの標的遺伝子としてSmad1を同定することができた。miR199a過剰発現TGマウスの作製も完了し、MeCP2及びmiR199a欠損アストロサイトのRNA-seqも終了しており、おおむね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
RNA-seq解析からのグリア機能性分子の同定を進めるが、並行してアストロサイト細胞内及び培養上清中に含まれる因子の質量分析も実施し、これらを統合して実際にニューロンの形態や機能に影響を与える因子の同定を行う。miR199a過剰発現TGマウスについてはその表現型を解析するとともにMeCP2欠損マウスとの交配で、MeCP2欠損マウスの表現型が改善されるかどうかも検討する。
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