研究課題
MeCP2 の遺伝子変異は、Rett 症候群(RTT)をはじめ、自閉症、統合失調症などを含めた様々な精神疾患・神経発達障害への関与が示唆されているものの、その発症機序の詳細は不明である。これまで、神経細胞におけるMeCP2 の機能異常がRTT 発症の原因と考えられてきたが、最近非神経細胞(グリア細胞)の機能異常がRTT 病態発症の一因である可能性が示唆され始めている。代表者は、MeCP2 がmicroRNA(miRNA)マイクロプロセッサーであるDrosha 複合体と結合し、miR-199aのプロセッシングを促進すること(Cell Reports 2015)、miR-199a はMeCP2 の下流で神経幹細胞のアストロサイトへの分化を抑制することを発見した(未発表)。昨年度の研究では、miR199aの標的候補因子として同定した、Smad1が実際に標的となっていることをルシフェラーセ解析などにより明らかにした。また、MeCP2欠損神経幹細胞ではSmad1の発現が更新しており、Smad1のshRNAを用いたノックダウンにより、アストロサイト分化の亢進が正常化することも明らかにした。miR199a欠損アストロサイトがMeCP2欠損アストロサイト同様に、ニューロンの成熟を妨げることも確認できた。本年度の研究では、野生型、MeCP2及びmiR199a遺伝子欠損マウス生後1日目の海馬の1細胞トランスクリプトーム解析を行った。この解析では、予想通り、MeCP2及びmiR199a遺伝子欠損マウス海馬において、ニューロンが減少し、アストロサイトの増加が認められた。また、各マウスのアストロサイト培養上清の質量化学分析も行い、MeCP2及びmiR199a遺伝子欠損アストロサイトにおいて、共通して減少している分子を同定した。その分子を神経細胞の培養系に添加することで、軸索進展など、神経細胞の成熟が促進されることもわかった。今後は、この分子の詳細な機能解析と作用機序を明らかにする予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要に記載したように、MeCP2及びmiR199a遺伝子欠損アストロサイトにおいて、共通して減少する機能分子を同定できたため、おおむね順調と言える。
今後は、今回同定した分子の詳細な機能解析と作用機序を明らかにし、レット症候群病態発症のメカニズムを明らかにする。また、miR199a過剰発現TGマウスについてはその表現型を解析するとともにMeCP2欠損マウスとの交配で、MeCP2欠損マウスの表現型が改善されるかどうかも検討する。
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