研究課題/領域番号 |
17H01391
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中別府 雄作 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30180350)
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研究分担者 |
作見 邦彦 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (50211933)
土本 大介 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (70363348)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / アミロイドーシス / ミクログリオーシス / 8-オキソグアニン |
研究実績の概要 |
アルツハイマーモデルマウス(3xTg-AD)にMth1とOgg1遺伝子の二重欠損(Mth1・Ogg1-DKO)を導入した3xTg-AD/Mth1・Ogg1-DKOマウスが、3xTg-ADマウスよりも早期(5ヶ月齢)にモーリス水迷路試験で認知機能低下を示すことを見出し、さらに脳ゲノムへの8-oxoGの蓄積とミクログリオーシスの亢進とともに神経細胞の脱落を認めた。ミノサイクリンの投与によりミクログリオーシスを抑制すると神経細胞の脱落が顕著に抑制された。3xTg-ADマウスにヒトMTH1トランスジーンを導入した3xTg-AD/hMTH1-Tgマウスにおいて、14ヶ月齢でも認知機能の低下が軽度で海馬と大脳皮質への8-oxoGの蓄積が顕著に低下していることを明らかにした。 ヒトAD患者脳と2種類のADモデルマウス脳における遺伝子発現の種間比較プロファイリングを行った。ADモデルマウスとしては、高度なAβアミロイドーシスを呈するAppノックインマウス(App[NL-G-F])と細胞内Aβ凝集および神経原線維変化を呈する3xTg-ADマウスを用いた。App[NL-G-F]マウスとヒトAD患者の大脳皮質において共通して発現が変化する遺伝子は、炎症反応または免疫疾患に関連するものであった。App[NL-G-F]マウスの大脳皮質では、これらの遺伝子群に含まれるAD関連遺伝子の発現がAβアミロイドーシスの進行およびミクログリオーシスとアストログリオーシスの悪化とともに増加していた。一方、3xTg-ADとヒトAD大脳皮質で共通に発現が変化する遺伝子群は神経機能の異常に関連するものであった。App[NL-G-F]マウスの大脳皮質では、ADの危険因子、あるいは遅発性ADにおける遺伝子制御ネットワークのとして同定されている遺伝子群の発現も変化していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3xTg-ADマウスにおけるMth1/Ogg1遺伝子の二重欠損によりミクログリアのDNAに8-オキソグアニンが高度に蓄積すると、ミクログリアの高度な活性化が引き起こされ神経細胞の脱落も誘発されることが明らかになった。この結果は、アルツハイマー病の発症には、活性酸素による核酸の酸化が関与することを初めて示したものである。 また、高度なAβアミロイドーシスを呈するAppノックインマウス(App[NL-G-F])においてミクログリーシスが誘発されることを見出しており、このモデルマウスにMth1, Ogg1, Mutyh遺伝子の欠損を導入したマウス系統を樹立できており、今後はこのマウスを用いた解析を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に樹立したMth1, Ogg1, Mutyh遺伝子を欠損するAppノックインマウスを用いて、認知機能解析、脳の病理解析を進める。さらに各系統のマウス脳から神経細胞とミクログリアを単離培養し、それぞれの遺伝子が活性酸素の自然生成、8-oxoGのゲノム蓄積と神経細胞の機能障害、ミクログリアの活性化に及ぼす影響を詳細に解析していく方針である。
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