研究課題
生後の脳において生まれるニューロンは、脳の恒常性維持・破綻や再生機構に関わっている。 研究代表者らは、様々なモデル動物を用いて、正常時と疾患による傷害後の再生過程におけるニューロン新生の様々なメカニズムを明らかにしてきた。本研究課題は、新生ニューロンが移動・停止する際の形態変化と成熟機構、再生過程における分化機構を解明するとともに、細胞移動を促進する技術を開発することを目的としている。本研究の成果は、脳の可塑性の理解に貢献し、新たな再生医療の基盤技術を提供するものと考えられる。平成30年度は、以下の成果が得られた。1)ニューロンの分化・成熟における血管の役割:以前研究代表者らは生きた動物の脳内を観察することのできる顕微鏡を用いて、嗅覚情報を処理する部位(嗅球)においてニューロンが死んだ後、幹細胞から産生される同じ種類のニューロンが、細胞が死んだ場所に優先的に定着することを明らかにした。平成30年度は、このような細胞の再生過程をさらに詳細に解析し、周囲に存在する細胞との関係を明らかにした。嗅球の血管が再生に関与している可能性を示唆する結果が得られた。2)再生過程における移動・分化機構の解明と再生誘導方法の開発:これまでに研究代表者らは脳傷害モデル動物を用いて、脳組織が損傷してニューロンが失われた後、脳内の他の細胞の形態が変化し、再生を促進または阻害することを明らかにした。平成30年度は、これらの変化を引き起こすメカニズムの一端を解明した。さらに、そのメカニズムを操作することによって、移動を促進することができることを見出した。
1: 当初の計画以上に進展している
ニューロンの移動メカニズムや再生促進についての研究が大きく進展し、翌年以降に計画していた実験も行う事ができた。
これまでの研究で見出されたニューロンの移動・再生メカニズムについて、形態学的・細胞分子生物学的な方法を用いて引き続き解析を行う。完了した項目に関しては、新たな実験手法の導入も検討していく。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 8件、 招待講演 10件) 備考 (5件)
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