研究課題/領域番号 |
17H01394
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊川 正人 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (20304066)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 実験動物 / ゲノム編集 / ウイルスベクター / CRISPR/Cas9 / ES細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は、オンデマンドゲノム編集システムの開発と、その応用である生殖不全マウスの重点解析を2 つの大きな柱にして研究を進めている。さらにサブテーマを設けて目標を明確し、連携研究者を担当者に配置することで、問題点の早期発見・解決および効率的に研究を推進している。 平成29年度はオンデマンドゲノム編集システムの開発を中心に進めた。CRISPR/Cas9 システムでは、sgRNA により標的20 塩基に加えて直下のPAM配列 (NGG) を認識し、Cas9 タンパク質により標的配列を切断する。従来のCas9 システムではPAM 配列が標的選びを制限すること、またオフターゲット切断のリスクが問題視されていた。そこで東京大学で作製された改良型Cas9 を用いて、HEK293培養細胞において切断活性を検討した。その結果、NGNをPAM配列とする改良型Cas9を用いたゲノム編集に成功した。オフターゲット切断については、顕著な上昇は認められなかった。 また我々はsgRNAではなく、crRNA/tracrRNAとCas9蛋白質を混合し、エレクトロポレーションにより導入することで受精卵ゲノム編集の効率化を行った。単なる切断変異に加えて、鋳型となるDNAを同時に導入することで点変異やタグ挿入、さらにはEGFPなどのレポーター遺伝子の挿入が行える条件を検討した。点変異やタグなどは合成オリゴDNA、EGFPなどのレポーターには長い一本鎖DNAが適していることを見出した。なお我々が試した限りでは、ガラス管を用いて二本鎖DNAを前核注入する方法が一番相同組み換え効率が高かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
改良型Cas9が培養細胞で活性を示すなど、予定どおりの成果を挙げている。なおES細胞を用いたゲノム編集により、精子鞭毛蛋白質TCTE1のFLAGタグ化と解析に成功しており、PNAS論文発表に貢献した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ゲノム編集技術の開発とその応用による生殖関連遺伝子機能解析を行う。なお、通常は1箇所切断による数塩基の挿入・欠損(Indel)によるフレームシフト変異で遺伝子破壊を行うことが多いが、その場合には第二ATGから翻訳を開始したり、スプライシングの異なる新規mRNAが出現したりすることで、機能補完するケースがあることを見出した。そこで今後は、開始コドンと終始コドンの2箇所を切断してコーディング領域を抜き取るアプローチにすることとした。
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