研究課題
本研究は、オンデマンドゲノム編集システムの開発と、その応用である生殖不全マウスの重点解析を2つの大きな柱にして研究を進めている。さらにサブテーマを設けて目標を明確にし、連携研究者を担当者に配置することで、問題点の早期発見・解決および効率的に研究を推進している。平成30年度もCRISPR/Cas9 システムゲノム編集システムの改良を中心に進めた。従来のCas9 システムでは標的20塩基に加えて直下のPAM配列 (NGG) を認識し、Cas9 タンパク質により標的配列を切断するため、PAM 配列が標的選びを制限する問題があった。そこで東京大学で作製された改良型spCas9 (NGGではなくNGNをPAM配列とする)を用いてゲノム編集動物作製効率を検討した。残念ながら受精卵への前核注入やエレクトロポレーション (EP) では、種々の条件を試したもののゲノム編集マウスを得ることはできなかった。一方、ES細胞では、頻度は劣るもののゲノム編集クローンを樹立することができたことから、標的配列の選択幅が広がった。また胚性致死遺伝子の生後機能解析に有効なキメラ解析を達成するために、ミトコンドリアが赤色、先体が緑色蛍光で標識された精子を作るトランスジェニックマウス系統からES細胞を樹立した。その応用として、胚性致死遺伝子であるHydinを欠損したES細胞がキメラ動物内では精子に分化できることを示した。さらに、Hydin欠損細胞由来の精子は鞭毛形成異常を示すことを明らかにして論文報告した。他にもCmtm2やGk2など、雄性不妊となる遺伝子の同定に成功し、論文報告している。
2: おおむね順調に進展している
改良型Cas9をES細胞に応用することで、従来は切断できなかったGGを持たない繰り返し配列などもゲノム編集できるようになった。NGN型Cas9については共同研究成果としてScience誌に報告した。また遺伝子破壊により雄性不妊となる遺伝子群について、複数論文報告した。
引き続き、ゲノム編集技術の開発とその応用による生殖関連遺伝子機能解析を行う。特にNG型Cas9については、spCas9に加えてsaCas9についても改良を加えて検討を続け、全ての配列に対応するゲノム編集システムの構築を目指す。なお、汎用性を高めるために、受精卵EPによるゲノム編集動物作製の効率化にも取り組む。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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