研究課題/領域番号 |
17H01395
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
林 克彦 九州大学, 医学研究院, 教授 (20287486)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 始原生殖細胞 / コモンマーモセット |
研究実績の概要 |
始原生殖細胞に特異的なレポーター遺伝子をもつコモンマーモセットES細胞を用いて、生殖細胞への分化誘導条件を検討した。まずは使用しているES細胞が始原生殖細胞への分化能を有しているかを検討するために、マウスやヒトにおいて始原生殖細胞の誘導に十分な転写因子をES細胞において強制発現させた。その結果、それらの転写因子の強制発現に応じて、コモンマーモセットES細胞からも始原生殖細胞への分化を示唆するレポーター遺伝子の発現が認められた。これらのことはコモンマーモセットES細胞が始原生殖細胞への分化能を有していることを示唆しているほか、マウスやヒトに共通した遺伝子ネットワークがコモンマーモセットの始原生殖細胞の分化にも機能していることが明らかとなった。 次に、転写因子の強制発現によらない始原生殖細胞の分化誘導を行った。種々の検討の結果、マウスにもヒトにも認められない独自の培養条件がコモンマーモセットの始原生殖細胞の誘導には必要なことが明らかになってきた。この違いは始原生殖細胞の分化を司る転写因子は共通するものの、コモンマーモセットにはそれを動かすシグナルに独自のものがあること示唆している。 生殖巣環境の再構築については、マウスES細胞を用いた生殖巣組織の誘導実験に一定の成果が認められた。これらの結果をもとにコモンマーモセットES細胞にも種々のレポーター遺伝子を組み込んだ。今後はマウスでの分化実験を参考にコモンマーモセットでも生殖巣組織の誘導を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予想以上にコモンマーモセットES細胞から始原生殖細胞を分化誘導する培養条件の決定に時間を費やした。これはコモンマーモセットES細胞がマウスともヒトとも異なる独自の性質を持っていることに起因する。本研究では、予定にはなかったが、まずコモンマーモセットES細胞に転写因子を強制発現させることにより、始原生殖細胞への分化能を確認した。その確認後に様々な検討を重ねることにより、始原生殖細胞への分化培養条件を決定した。コモンマーモセットのES細胞に関する研究はマウスやヒトと比較して少なく、独自にひとつひとつの問題を解決しながら研究を進めたために、計画よりもやや遅れた。一方でこれらの研究を介して、コモンマーモセットの始原生殖細胞の決定機構の一端が明らかになると考えられた。現在は分化誘導途中の細胞、および分化誘導に必須なシグナルの阻害剤を加えた細胞の遺伝子発現解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに得られているコモンマーモセットの始原生殖細胞様細胞の機能的な解析を行う予定である。具体的にはマウスの生殖巣との共培養を行い、生殖細胞の分化マーカーが上昇するかについて解析する。 これまでの研究を介して、コモンマーモセットの始原生殖細胞の決定機構の一端が明らかになると考えられる。これまでに分化誘導途中の細胞、および分化誘導に必須なシグナルの阻害剤を加えた細胞の遺伝子発現解析を行っている。今後において、これらの解析をもとにそれぞれのシグナルに応答する遺伝子とその機能性について明らかにしていく予定である。 生殖巣の分化誘導実験に関しては、マウスの知見をもとに、すでに作製したレポーターをもつコモンマーモセットES細胞を用いて、分化培養実験を行う予定である。
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