本年度は、p16陽性老化細胞可視化マウスの樹立と解析を行った。まずこのマウスのMEFsを樹立し、様々な細胞老化誘導刺激で処理したところ、無処理のMEFsではtdTomato陽性細胞は検出できなかったが、放射線、抗がん剤など解析したすべての細胞老化誘導刺激で顕著にtdTomato陽性細胞が増加した。次にマウス個体を用いて解析したところ、腎臓、肝臓、脳、心臓を始め解析したほとんど全ての臓器・組織においてp16陽性(tdTomato陽性)細胞が検出された。tdTomato陽性細胞の割合は各臓器において様々であったが、5ヶ月齢マウスにおいて平均して0.5~数%程度であった。興味深いことに、DNA損傷を誘導するドキソルビシンを腹腔内に投与すると、肝臓、腎臓などにおいて有意にtdTomato陽性細胞の割合が増加した。また膵臓においては約50%の細胞がtdTomato陽性であった。既に成熟した膵分泌細胞ではp16が陽性であることが知られているため、これらは老化細胞ではなく成熟分泌細胞と考えられた。一方、個体内での老化細胞の寿命は、正常状態においては5ヶ月例マウスの腎臓において約2ヶ月ほどであった。またこの寿命は臓器・組織において有意な違いがあることがわかった。さらに2ヶ月齢及び10ヶ月齢マウスの肺を透明化して老化細胞の局在を解析したところ、10ヶ月齢マウスの肺門部において顕著に老化細胞が増加していたが、抹消部においては老化細胞の蓄積は顕著でなかった。以上のことから、本研究において樹立した16陽性細胞可視化マウスは個体における老化細胞の解析に非常に有用であることが分かった。
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