研究課題
A.Hippo経路遺伝子群の機能解析研究:(1) Hippo経路の軟骨細胞に対する役割:舌上皮においてMOBを欠損させると軟骨異栄養症となること、これはYAP/TAZがSOX9のリプレッサーとして作用することによることを見出した。(2) Hippo経路の舌上皮細胞に対する役割:舌上皮においてMOBを欠損させると直ちに舌癌ができる世界最速発がんモデルマウスを作製し、特許申請を行った。(3)Hippo経路の細胞競合に対する役割; YAP発現細胞株を樹立し、この細胞では接着能が低いために、通常培養条件では、親株細胞がYAP発現細胞の下に潜り込み、親株細胞では足場依存性シグナルが増強し、YAP発現細胞ではこのシグナルが抑制されるため、細胞競合の敗者となった。一方、接着性の低いdishでの培養下では、YAP発現細胞は勝者に転換した。また、YAP発現皮膚片は野生型マウス皮膚に移植した時にだけ、拒絶・剥離された。YAP発現皮膚片上皮はヘミデスモゾーム構成分子の発現が弱く、周囲の野生型上皮に押されることで、皮膚上皮剥離を認め、Hippo経路による細胞競合現象が、ヒト皮膚移植効率を支配する可能性を示した。B.P53を制御する核小体ストレス経路の機能解析研究: 質量分析解析で同定した PICT1と結合する蛋白質の中から,PICT1の安定化に関わる新規分子も見出した。また、これによってp53の安定性に関わる分子であることを見出した。またPICT1とRPL11の結合可視化系を,TR-FRET法で構築した。C.PTENを制御する分子の同定と機能解析研究:PTEN-EGFP発現細胞に,バーコードを含むsgRNAライブラリーを作用させ,PTENの発現が高くなった細胞をソート後次世代シークエンスで解析して,PTEN不安定化新規分子のスクリーニングを終え、その序列もつけた。
2: おおむね順調に進展している
本年度も、Oncogene, FASEB Jをはじめとする雑誌に 研究成果を報告していること、特許も申請していること、研究計画もおおむね順調に進んでいることから、現在までの進捗は概ね良好であると考える。
A.Hippo経路遺伝子群の機能解析研究:(a)Hippo経路の生理作用とその破綻病態の解明:本年度は昨年度から引き続きおこなっているHippo経路の頭頸部特異的欠損マウスの解析研究、子宮頸部特異的欠損マウス、T細胞特異的欠損マウスの解析を終了し、論文投稿までを行う。(b)Hippo経路を制御する分子の同定:昨年度はsiRNAライブラリースクリーニングによって、Hippo経路を活性化する分子2種類を、sgRNAを用いた二次スクリーニングをすることによって確認した。本年度はその他の二次スクリーニング陽性細胞をも取得して、二次スクリーニングを完全に終了するところまでを目標とする。B.P53を制御する核小体ストレス経路の機能解析研究: (a)PICT1安定化制御分子の探索:これまでPICT1安定化に関わるRPX分子を見出し、この分子が欠損すると、PICT1の消失、RPL11とMDM2の結合増加、p53の活性化をみることを見出した。そこで本年度はRPXとPICT1との結合を可視化できるシステムを構築する。これによって、RPXとPICT1との結合を変化させる蛋白質や化合物の探索に利用する。またRPXの核小体ストレス経路以外にも作用する可能性について検討する。C.PTENの制御機構研究: (a)PTENとWWP2との結合を可視化できるシステムを構築する。これによって、PTENとWWP2との結合を変化させる蛋白質や化合物の探索に利用する。(b)新規PTEN活性化制御因子の同定:sgRNAライブラリーを用いて、PTENの不安定化を引き起こす分子をスクリーニングし、実際スクリーニング陽性遺伝子をノックダウンするとPTEN蛋白質発現の増強を見る分子6種類を見出した。そこで今後、これら分子がPTENに直接結合するのか、どのように作用するのかを検討する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 1件) 産業財産権 (1件)
FASEB J
巻: 33 ページ: 5548-5560
10.1096/fj.201802005R
Carcinogenesis
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Genes Cells
巻: 23 ページ: 952-962
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Development.
巻: 145 ページ: 159244
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