本研究では、(1)Hippo経路の個体における機能と活性化機構、(2)p53を下流標的とする核小体ストレス経路の鍵分子PICT1の機能と制御機構、 (3)PTENの新規制御機構を解明して癌抑制遺伝子研究を新展開させる。2020年度には、以下の成果を得た。 (1)(a)Hippo経路の生理作用とその破綻病態の解明:子宮頸部特異的MOB1欠損マウスを作製報告し、子宮頸癌はYAP活性が蓄積し、ある閾値を超えた時に癌が発症する仮説を提唱した。また、乳腺特異的なMOB1欠損マウスにも乳癌が発症することなども見出した。(b)Hippo経路を制御する新規分子の探索:siRNAライブラリースクリーニングを用いて、YAP活性を著しく抑制するRNA分解・翻訳抑制に働く分子を見出し、その直接のRNA標的を見出した。またチオレドトキシン阻害によってROSを増加させ、YAPを抑制することも見出した。 (2)p53経路制御に重要なPICT1の制御機構: PICT1安定化に関わるRPX分子を見出し、RPXが欠損すると、PICT1の蛋白質崩壊とp53の活性化をみることを見出してきた。本年度は、PICT1とrRNAとの結合部分を絞り込んだ。また、RPX-floxマウスの作製も終了した。 (3)PTENの制御機構研究: (a)PTENの最も強力な既知のE3リガーゼ:PTENを不安定化する最も強力な既知ユビキチンリガーゼはWWP2であることを見出し、PTENとWWP2の結合を可視化できるシステムの構築を終了した。 (b) PTEN制御新分子探索:EGFP-PTEN発現量変化を指標に、sgRNA/CRISPRライブラリーによる全ゲノムスクリーニングを行い、13遺伝子を候補遺伝子として得た。これらのうち、PTEN安定化に強く関与する3遺伝子に注目し、これらの遺伝子欠損マウスの作製に入った。
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