研究課題
本年度は、Casタンパク質とガイドRNAの複合体(RNP)を用いたゲノム編集に最適な高特異性Cas9であるHiFi Cas9(R691A変異型)および野生型Cas9について、ssODNノックインの効率を、NGS解析により算出した。その結果、HDR/NHEJ率は、野生型Cas9とHiFi Cas9でほぼ同程度であり、野生型Cas9と比べてより優位なノックイン効率は認められなかったものの、HiFi Cas9を用いることで、より高い安全性を担保しつつ効率的に一塩基置換を導入できる可能性を示唆した。当研究室で開発したマイクロホモロジー媒介末端結合を介した遺伝子ノックイン(PITCh法)のNGSデータを解析するコンピュータプログラム(マキアート)を開発した。ヒトの40遺伝子座についてヒト培養細胞においてPITCh法による遺伝子ノックイン実験を行い、ノックイン細胞のゲノムDNAを用いてNGSデータを取得した。得られたNGSデータを用いたマキアートを用いて解析することによって、正確なノックイン効率およびNHEJによる変異導入効率を算出することに成功した。また、正確なノックイン効率の影響を与える複数の因子について明らかにすることができた。疾患モデル細胞作出のためのPITCh法を介した方法の確立を試みた。ムコ多糖症6型に見られる疾患変異(ArsB遺伝子でのSNP)を再現する一塩基多型を絞り込み、ヒト培養細胞での導入研究を行った。
2: おおむね順調に進展している
疾患モデルの作製に必要なssODNやDNAドナーを用いた基盤的な遺伝子ノックイン技術を確立することができた。さらに、ノックイン効率を評価するNGSデータのコンピュータ解析システムを確立した。これらの結果から順調に研究が進展していると判断できる。
これまで確立してきたゲノム編集技術を用いて疾患モデル細胞、iPS細胞およびモデル動物の作製を行う。一塩基レベルでの疾患変異を予期せぬ改変が起きていないことの評価を行いつつ進める計画である。
すべて 2019 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Scientific Reports
巻: 9 ページ: 8016
10.1038/s41598-019-44387-w
Cell
巻: 178 ページ: 491-506
10.1016/j.cell.2019.05.029
Stem Cell Reports
巻: 13 ページ: 322-337
10.1016/j.stemcr.2019.07.003
Nature communications
巻: 10 ページ: 5302
10.1038/s41467-019-13226-x
http://www.mls.sci.hiroshima-u.ac.jp/smg/index.html