研究実績の概要 |
本研究では、転写活性化と不活性化におけるヒストン修飾の意義を理解するために、生細胞の翻訳後修飾可視化系にゲノム可視化系を組み合わせ、(1)熱ショックストレス誘導による転写活性化の際のクロマチン動態、(2)X染色体不活性化に伴うヒストン修飾動態、を明らかにすることを目的として行っている。(1)熱ショックストレスに応答した内在性転写単位の活性化メカニズムの解析:mCherryやHaloTagと融合した熱ショック転写因子(HSF1-mCherry, HSF1-Halo)を発現する細胞に、修飾特異的Fabを導入し、培養温度を43度にシフトした際のHSF1とヒストン修飾、RNAポリメラーゼII修飾の動態を観察した。また、HSF1が集積するサテライト領域(Sat3)に局在化するdCas9/CRISPRを構築し、さらに、その領域のヒストン修飾を変化させる系を構築した。ヒストンH3K9の脱メチル化酵素KDM4Dを融合させると、H3K9メチル化レベルが低下し、ヒストンアセチル化酵素であるp300のアセチル化酵素ドメインを融合させると37度においてもH3K27のアセチル化が上昇した。このアセチル化された状態では、37度でも転写が起こることが分かった。 (2)細胞分化・脱分化に伴うX染色体の不活性化と再活性化におけるクロマチン動態の解析:トリメチル化H3K27特異的細胞内可変領域抗体(Mintbody; modification-specific intracellular antibody)とX染色体上の特定領域を同時に可視化できるマウス胚性幹細胞樹立した。この細胞を分化させ、X染色体の不活性化の誘導を行っている。
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