研究課題/領域番号 |
17H01420
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高木 淳一 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (90212000)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Wntシグナル / X線結晶構造解析 / 受容体 / 蛋白質間相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究は、細胞外のWntリガンドが膜受容体に認識され、その情報が細胞膜を横切って伝達されて細胞の挙動を左右する引き金を引くメカニズムを原子分解能の立体構造レベルで明らかにすることを目指し、以下の4つの業務項目に従って研究を進めた。 項目1)各種ほ乳類WntサブタイプのAfmによる可溶化とその活性試験: WntとAfm(アファミン)は無血清培地中で細胞に共発現させることによって安定な複合体として培養上清中に回収することができる。平成29年度はWnt3aとAfmの安定発現株を樹立し、上記の複合体の大量精製を行った。 (項目2)ほ乳類WntリガンドとAfmの複合体の結晶構造解析:Wntリガンドのもつ強い疎水性という課題を、Afm複合体化によって解決し、Wnt-Afm複合体の状態で結晶化をおこなった。またヒトAfm単独の結晶化と構造解析を達成した。 (項目3)ほ乳類Wnt特異的バインダーの取得とそれらの機能解析:東京大学の菅裕明教授が開発した特殊環状ペプチドスクリーニング法「RaPIDシステム」を応用し、マウスWnt3aに対する環状ペプチドバインダーを3つ単離することが出来た。 (項目4)Wnt-Fz CRD-2者、およびWnt-Fz-LRP6ec3者複合体(細胞外装置)の構造解析: Wnt-Fz CRD2者複合体については、構造解析品質の回折を見せる結晶を得ることに成功し、2.9オングストローム分解能での構造決定を達成した。上記のWnt-Fz CRD2者複合体とLRP6ecの間の相互作用解析系をビアコアを用いて確立し、安定な3者複合体を形成するLRP6変異体の単離を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
項目1,2,においては期待していたよりも若干進展に遅れがあるが、項目3について、すでにWnt3aバインダーペプチドを3種単離できたことは極めて重要である。ネイティブなWnt3aを認識できる試薬は、抗体を含めまだ報告されて居らず、世界初の快挙である。また、項目4においても、Wnt3-Fz2者複合体の結晶構造が得られた。これは哺乳類のWnt蛋白質で世界初の構造となり、しかも分解能でもこれまで一つしかないツメガエルWnt蛋白質のそれを超えている。以上のことから、「当初の計画以上の進展」と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は一刻も早く上記の2者複合体の結晶構造の論文を完成し、投稿することが最優先である。製薬企業を含め世界中の有力なラボが試みている構造解析なので、その競争は激烈であり、いつ抜かれてもおかしく無い状況である。一流誌に掲載される論文とするには、立体構造情報を元にした機能解析などがさらに必要であり、そのためには、4つの研究項目のうちさほど重要でない1と2については少し優先順位を下げる必要があると考えている。
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