研究課題/領域番号 |
17H01430
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中戸川 仁 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (90414010)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オートファジー / オルガネラ / 窒素飢餓 / 出芽酵母 / 核 / 小胞体 / ペルオキシソーム |
研究実績の概要 |
オートファジーは細胞が備える大規模な分解機構である。本研究では、オートファジーによる核の分解「ヌクレオファジー」、小胞体分解「ERファジー」、ペルオキシソーム分解「ペキソファジー」におけるオルガネラ動態とそのメカニズム、これら分解経路の制御機構および生理的意義の解明を目的としている。以下に平成29年度に得られた成果を列挙する。 (1) ヌクレオファジー、ERファジーにおけるオルガネラ動態の分子機構の解明:Atg40にはER上で膜曲率を生み出す機能があること、Atg40は伸張中のオートファゴソーム上のAtg8との相互作用を介してER膜上で濃縮されることを明らかにした。一方、多胞体形成に関わるESCRT-IIIがヌクレオファジーに重要であることを見いだした。 (2) ヌクレオファジー、ERファジーの制御機構の解明:ATG39、ATG40の発現は窒素源飢餓に応じて転写レベルで上昇する。それぞれの遺伝子の転写制御に関わるシス配列を決定した。また、Rpd3-Sin3ヒストン脱アセチル化酵素複合体がATG40の転写抑制に関わることを明らかにした。 (3) ヌクレオファジーの生理的意義の解明:ヌクレオファジーは窒素源の欠乏に応じて誘導される。ATG39破壊株は窒素欠乏下で核の形態異常と生存率の低下という顕著な表現型を示すが、このとき、ミクロヌクレオファジーが誘導されていることを見いだした。 (4) ペキソファジーの制御機構の解明:ペキソファジー受容体Atg36のHrr25によるリン酸化がペルオキシソームの生合成に必須の膜タンパク質Pex3とAtg36との相互作用により促進されることを示した。 (5) ユビキチン-プロテアソーム系によるペキソファジー制御の分子機構と生理的意義の解明:プロテアソームによる分解に耐性となったAtg36リジン残基置換変異体を取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように、申請時に計画した各項目について着実に進展が見られていることに加え、マクロヌクレオファジーとミクロヌクレオファジーとの関係など、新たな展開が期待される成果も得られているため、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(1) ヌクレオファジー、ERファジーにおけるオルガネラ動態の分子機構の解明:Atg40のER膜上での濃縮がERの一部をオートファゴソームに取り込むための形態変化をERに引き起こす可能性がある。別のタンパク質由来の多量体化ドメインをAtg40に付加し、オートファゴソーム形成と無関係にER上でAtg40を会合させ、小胞体の折りたたみや断片化が引き起こされるか検証する。ヌクレオファジーのメカニズムについては、核膜上で集合したAtg39とESCRT-IIIの共局在を精査する。 (2) ヌクレオファジー、ERファジーの制御機構の解明:昨年度、ATG39、ATG40の転写制御に関わるシス配列を決定した。これらの配列に結合する転写制御因子を遺伝子破壊株ライブラリーを用いたスクリーニングおよびChIP-qPCRなどにより特定する。 (3) ヌクレオファジーの生理的意義の解明:核およびミトコンドリアの組成や機能の変化、またミクロヌクレオファジーとの関係に焦点を当て、ATG39破壊株が示す異常の原因を究明する。 (4) ペキソファジーの制御機構の解明:Atg36、Hrr25、Pex3のタンパク質間相互作用 に着目して、Pex3によってAtg36のリン酸化が促進されるメカニズムを明らかにする。 (5) ユビキチン-プロテアソーム系によるペキソファジー制御の分子機構と生理的意義の解明:各種遺伝子破壊株などを用いてプロテアソームによるAtg36の分解に関与するE2酵素、E3酵素を同定する。
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