研究課題/領域番号 |
17H01435
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
濱田 博司 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (00208589)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 発生遺伝 / 左右非対称性 / 母性因子 / 繊毛 / 着床前胚 |
研究実績の概要 |
私たちの体は、頭尾・背腹・左右という3つの極性(体軸)を持っている。このような形態の非対称性は、発生のどの時期において、どのような仕組みで生じるのか? 本研究では,マウスの胚発生において、左右と頭尾の極性の起源を解明する。左右の極性については、対称性を破る働きをする繊毛の形成・運動動態の制御の機構と,繊毛運動が作り出す水流シグナルが受容される機構を明らかにしようとした。当該年度において、以下の研究成果を得た。 1) 繊毛形成に必須なCluap1, Ift46, Ift88因子が、繊毛形成が誘導されると細胞質内にSpot状に集積すること、2) 繊毛の運動性に必要な因子であるCfap53(Ccdc11)は、軸糸内で微小管やdocking complexにタイトに結合した状態で存在し,ダイニン外腕を安定に微小管へ結合させていること、3)ノード脇の不動繊毛は、水流を感知するとCa2+の流入を促すこと、 4) 水流を感知してCa+2 が流入すると、RNA蛋白質Bicc1などを介してCerl2 mRNAが崩壊すること。
一方、頭尾の極性や着床前胚における細胞分化の非対称性の起源については、卵細胞で発現する母性因子に注目した。とくに、70種類のEpigeneticsを制御する因子の卵巣内での発現を調べた結果、その半数以上が卵細胞や顆粒膜細胞で発現することがわかった。そのうちで、卵細胞に特異的に発現する因子(5つ)について、母性因子としての役割の有無を調べるために、卵細胞特異的な遺伝子欠損マウスを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究は概ね順調に進んだが,2つの研究計画は、当初の予想よりも遅れた。
1)ノード脇に存在する水流を感知している不動繊毛は、機械刺激に反応しているのか?:光ピンセットを使ってこの問題に取り組んでいた共同研究者は、当初は2018年4月に理研のラボに合流して、この問題に取り組む予定であったが、本人が事故に会い怪我をしたために、合流が1年遅れた。
2)卵巣から作った切片を用いたin situ hybridizationで、卵細胞で発現するepigenetic制御因子を探索したが,切片のin situ hybridizationに技術的な問題が生じ、その解決に半年を要した。
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今後の研究の推進方策 |
1)ノード繊毛の形成と運動性獲得の機構:Cluap1, Ift46, Ift88が集積することの繊毛形成に置ける意義・役割を明らかにする。Ccdc11(Cfap53)が、なぜノード繊毛の運動性だけに必要なのか(他の繊毛の運動性には必要とされない)を解明する。 2)ノード脇の不動繊毛が水流を感知する際のCa2+の役割:水流に反応して繊毛から流入すると思われるCa2+の、左右非対称性における役割を調べる。 3)不動繊毛が水流を感知すると、Crown cellに何が起こる?:Cerl2 mRNAを崩壊する酵素を同定し、Ca2+がmRNAの崩壊を活性化する機構を明らかにする。 4)ノード脇に存在する水流を感知している不動繊毛は、機械刺激に反応しているのか?:光ピンセットの実験系を立ち上げ、ノードの不動繊毛が機械刺激に反するか否かを明らかにする。もし機械刺激に反応するなら、なぜ左側の不動繊毛だけが反応するのかを調べる。 5)Epigeneticsを制御する因子の母性因子としての役割:5種類の卵細胞特異的な変異マウスのPhenotypeを調べ、母性因子としの役割を持つか否かを明らかにする。母性因子として働く因子については、ゲノム中の標的部位、制御される遺伝子を同定する。
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