研究課題/領域番号 |
17H01440
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
稲葉 一男 筑波大学, 生命環境系, 教授 (80221779)
|
研究分担者 |
竹田 扇 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (20272429)
昆 隆英 大阪大学, 理学研究科, 教授 (30332620)
若林 憲一 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (80420248)
広瀬 恵子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (90357872)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 線毛運動 / 精子鞭毛 / ダイニン / 光受容 / BLUF |
研究実績の概要 |
申請者らが新規で発見したDYBLUP(Dynein-associated BLUF protein)の性状と機能を知るために、本研究ではホヤなどの動物や緑藻類クラミドモナスを用いて研究を進めた。本年度の実績と進捗状況は以下の通りである。(1)組換えDYBLUPの精製と結晶化を試みたが、可溶化が予想通りに行かず、成功には至っていない。研究手法を変え、クライオ電子線トモグラフィーによる結合部位の決定を試みた結果、DYBLUPは内腕ダイニンの1種であるf/I1ダイニンに結合しているtetherと呼ばれる構造に局在することが明らかになった。このことは、抗体とネガティブ染色法を用いた以前の我々の結果とも一致し、DYBLUPが内腕を介して光によるダイニン・鞭毛運動制御を行なっていることを示唆する。(2)DYBLUPを欠損したクラミドモナスの変異体を用いた結果、鞭毛の形成は正常に起き、その長さも電子顕微鏡レベルでの内部構造は正常なものと区別がつかなかった。運動速度や鞭毛の振動数も正常のクラミドモナスと大きな違いは見られなかった。次年度に詳細な運動解析を行い、DYBLUPの機能を考察する予定である。(3)DYBLUPの機能に関しては本年度に明らかにすることができなかった。これに関しては、クラミドモナス変異体を用いて次年度に行う。また、進化的に動物の起源に近い海産動物であるクラゲを用いて、DYBLUPの機能解析を次年度に行う。なお、上記(1)の進行に時間がかかったしまったため、ノックアウトマウスの表現型解析に関しては次年度に行うこととした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DYBLUPの軸糸内局在がわかり、内腕ダイニンの調節と関連づけられたことは大きな成果であった。また、DYBLUPを欠損したクラミドモナス変異体でも鞭毛形成、内部構造構築に異常がないことがわかった。今後、光による運動調節を調べることにより、DYBLUPの機能が明らかになると期待される。なお、上記研究実績(1)の進行に時間がかかったしまったため、ノックアウトマウスの表現型解析に関しては次年度に行うこととした。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度にはノックアウトマウスの表現型解析、クラミドモナス変異体の運動解析を優先して行い、DYBLUPが鞭毛繊毛運動、ひいては光による生物の高次機能調節において果たしている役割を解明する予定である。
|