研究課題
翻訳を担うリボソームは細胞内のタンパク質の半分以上を占め、その量を安定に維持することはすべての細胞にとって重要である。リボソームRNAをコードする遺伝子(リボソームRNA遺伝子)は、真核細胞では100コピー以上がタンデムに連なった巨大反復遺伝子群を形成している。リボソームを安定供給するためにはリボソームRNA遺伝子のコピー数の維持は必須である。しかしコピー間での組換えにより常にコピーを失っている。本申請研究では、コピー数の低下を感知し、増幅組み換えを誘導、そして一定のコピー数で増幅を停止させるコピー数調節機構の解明を目指す本年度は当初の計画通り前年度までに単離されたSIR2の転写抑制に関わる因子が実際にSIR2プロモーターに結合するのか、さらにそれらの因子の結合量とrDNAのコピー数の関係性について調べた。まず取れて来た4つの因子は興味深いことに全てrDNAの転写活性化因子UAFの構成因子であった。それらにマイクロコッカルヌクレアーゼのヌクレアーゼドメインを付加し、in vivoでDNAに結合している場合には、そこでの切断の結果が生じるDNA断片の長さから結合場所がわかるChECアッセイを行った。その結果、全てのUAFがSIR2プロモーターに結合していることがわかった。さらにChIPseq によりUAFの結合部位を全ゲノムで調べたところ、SIR2とrDNAのプロモーターのみにUAFが結合していることがわかった。また、rDNAのコピー数とSIR2 プロモーターの結合活性をChECアッセイで定量的に調べたところ、興味深いことにrDNA低コピー株でのみUAFの結合が観察された。以上の結果から、コピー数減少時にrDNAからあぶれたUAFが、SIR2に移動しSIR2の発現を抑制していると考えられ、rDNAコピー数調節の「椅子取りゲームモデル」を提唱した。
1: 当初の計画以上に進展している
取れて来た因子が興味深いことに全てrDNAの転写活性化因子UAFの構成因子であった。そのことから、コピー数のモニター機構がうまく説明できるモデル「椅子取りゲームモデル」を構築することができた。検証実験も成功しており、想定以上の結果を得ることができたと考える。
取れてきた因子の作用機序について解析する。興味深い点は、UAFの結合様式である。UAFはrDNAのプロモーターでは転写の促進、SIR2のプロモーターでは抑制と反対の効果を示す。また共通の配列もなく、SIR2プロモーターで抑制効果がなくなった変異株でも、rDNAのプロモーターの促進には影響が出ていないため、DNAの結合様式が両者で異なると考えられる。それらのメカニズムの解析を行う
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件) 備考 (2件)
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