研究課題
翻訳を担うリボソームは細胞内のタンパク質の半分以上を占め、その量を安定に維持することはすべての細胞にとって重要である。リボソームRNAをコードする遺伝子(リボソームRNA遺伝子)は、真核細胞では100コピー以上がタンデムに連なった巨大反復遺伝子群を形成している。リボソームを安定供給するためにはリボソームRNA遺伝子のコピー数の維持は必須である。しかしコピー間での組換えにより常にコピーを失っている。本申請研究では、コピー数の低下を感知して、増幅組換えを誘導し、そして一定のコピー数で増幅を停止させるコピー数調節機構の解明を目指す前年度までにリボソームRNA遺伝子のコピー数をカウントする因子として、リボソームRNA遺伝子の転写の活性化因子UAF複合体を同定した。さらにリボソームRNA遺伝子の低コピー株で、UAF複合体がSIR2のプロモーターに結合していることを見出している。本年度は当初の計画通り、UAF複合体がSIR2の転写を抑制する作用機序について解析した。方法としては、それぞれのUAFにマイクロコッカスのヌクレアーゼドメインを融合したタンパク質を細胞内で発現させ、切断断片の長さから結合領域を同定した。その結果、UAF複合体はSIR2のORFから-200bpのTATA box上流付近に集中していることがわかった。さらにプロモーターの欠損解析を行ったところ、-200bp付近の20bpの領域を削ったプロモーターではrDNA低コピー株でもSIR2の転写を抑制しないことが判明した。また、その20bpの配列は、SIR2以外の遺伝子のプロモーターでも転写抑制効果を示すことが判明した。
2: おおむね順調に進展している
UAFが結合してSIR2の転写を抑えるプロモーター配列の同定に成功した。さらにその配列が他の遺伝子でも同様の抑制機能をもつことを発見した。
今回同定した配列が、実際にリボソームRNA遺伝子のコピー数が低下した株でSIR2の発現を抑制し、コピー数の回復を誘導しているのか検証する。
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