研究実績の概要 |
分裂酵母の減数分裂においては、ヒストンH4の8番目と12番目のリジン(K8、K12)のアセチル化がDNA複製期にクロマチンが緩むことに必要であり、これらのリジンをアルギニンに置換した変異株(H4-K8R/K12R)はDNA複製阻害剤であるヒドロキシウレア(HU)に対し超感受性を示し低濃度のHU存在下で増殖不能となる。分裂酵母を用いてH4-K8R/K12R変異のHU超感受性を抑制するマルチコピーサプレッサーを検索したところ、候補遺伝子が約10種類取得できた。これらの候補遺伝子を分子遺伝的に解析し、アセチル化ヒストンと遺伝的に相互作用する因子として、2つの遺伝子に絞りこんだ。また、ヒト細胞核抽出液を調整し、アセチル化したヒストンH4K8・K12に結合するタンパク質を生化学的に精製し、質量分析により検索し、幾つかの候補タンパク質を同定した(未発表)。 また、減数分裂時にヒストンH2A量が低下すると、染色体分離に異常が出ることを明らかにした2個のヒストンH2A遺伝子の1つを破壊した株では、染色体分離の時に、染色体の末端がからまったような形態を示し、胞子生存率が低下した。この変異株に対して、3個のヒストンH3/H4遺伝子のうち2つを破壊すると、染色体分離異常が軽減し、胞子生存率が上昇した。このことから、ヒストン分子種の量的バランスが重要であることがわかった。この成果は、論文として投稿準備中である。 また、複製タイミングに影響を与えるテロメアタンパク質について解析し、論文を発表した(Ogawa et al., EMBO Journal, 2018)。蛍光顕微鏡画像で多重染色像を正確に重ね合わせるプログラムを開発し、論文で発表するとともに、プログラムをオープンリソースとしてWeb で公開した(Matsuda et al., Scientific Reports, 2018)。
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