研究課題
細胞内共生による葉緑体の成立は、真核細胞による光合成細胞の捕食、一時的保持(盗葉緑体;任意共生)、恒久的保持(絶対共生)の順に進行したと考えられている。共生体光合成は宿主細胞の成長増殖に必要である一方、高濃度の活性酸素種を発生し宿主にダメージを与える。従って細胞内共生成立には、宿主真核細胞による共生体光合成毒性への対処機構の発達が必須であったと推定される。本研究では、共生の各段階にある生物を用い、宿主細胞が共生体光合成による酸化ストレスにどの様に対処しながら増殖するのか、宿主細胞が、共生体への無機塩類供給とそれに伴う光合成活性調節機構をどの様な方法でどの程度行えるようになっているかを明らかにする。これらの結果を統合し、光合成毒性への対処、宿主による光合成活性制御という視点から、自然界における真核細胞の光合成戦略の多様性と、細胞内共生の進化機構を解明することを目的とする。2019年度は以下の解析を行った。(1)2018年度に行った藻食アメーバの被食者光合成に対するトランスクリプトームの変動の結果を精査し、光合成生物から水平転移したクロロフィルの無毒化に関与する遺伝子群を見いだした。系統の大きく異なる3種のアメーバへの独立水平転移が明らかとなった。さらに、当該遺伝子群が光と酸化ストレスのどちらによってもその発現が昂進することがわかった。ここまでの内容を学術誌に発表した。(2)盗葉緑体性渦鞭毛虫について、上記と同様のトランスクリプトーム変動の結果を精査し、クリプト藻は、宿主渦鞭毛虫に取り込まれると、光に対する遺伝子発現変動の喪失が起こることが明らかとなった。さらに、渦鞭毛虫に取り込まれると、クリプト藻由来の核が多倍体化すること、クリプト藻核が光照射下で、宿主渦鞭毛虫に対する光合成酸化ストレスを軽減することが示唆された。以上の結果をまとめ論文を学術誌に投稿した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件)
Nature Communications
巻: 10 ページ: Article 5606
doi: 10.1038/s41467-019-13568-6
mBio
巻: 10 ページ: e00833-19
doi: 10.1128/mBio.00833-19
Plant Direct
巻: 3 ページ: e00134
doi: 10.1002/pld3.134