研究課題/領域番号 |
17H01449
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐竹 暁子 九州大学, 理学研究院, 教授 (70506237)
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研究分担者 |
韓 慶民 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40391180)
北島 薫 京都大学, 農学研究科, 教授 (40721379)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 植物 / 遺伝子ネットワーク / マスティング / フェノロジー / 進化 / 開花 / 受精 / 胚嚢発生 |
研究実績の概要 |
本研究では、送粉様式、結実までの経過時間、開花季節、花・種子量の年変動の程度など、多様な繁殖形質をもつブナ科樹木を対象に、① 花と種子生産に必要とされる資源投資量の測定、② 網羅的遺伝子発現解析による遺伝子制御ネットワークの推定と種間比較、③ 開花遺伝子発現制御の進化モデルの開発と解析、を行うことによって、繁殖資源分配戦略と開花戦略の多様化メカニズムを遺伝子ネットワーク進化の視点から明らかにすることを目的とする。2019年度は2017年度より蓄積されたサンプルを用いた分析をもとに上の②と③を中心に研究に進めた。アラカシとマテバシイにおいて1対1のペアとして存在する相同遺伝子9,258個を抽出し野外環境条件における発現パターンを2年間継続して分析した結果、季節の進行とともに、開花・結実時期の制御、窒素や糖の輸送、ストレス応答に関与する遺伝子の発現プロファイルが協調的に変化し適切な環境応答を示すことが明らかとなった。多くの相同遺伝子は種間で保存された発現パターンを示したが、種間で明らかに異なる発現パターンを示す遺伝子群が検出された。これらの詳細を分析した結果、夏の活性酸素応答、花粉管伸長、RNA指向型DNAメチル化に関わる遺伝子群の発現プロファイルがマテバシイとアラカシでは大きく異なっていることが明らかとなった。これらの遺伝子を、受粉後から種子成熟まで1年以上必要とする2年成の特徴に関与する候補遺伝子として選定した。花粉管伸長とDNAメチル化に加えて胚嚢発生や受精後の胚発生に関与する遺伝子も含めて遺伝子制御ネットワークの因果推論を行った結果、極核の融合に関与する遺伝子が制御ネットワークの上流に位置することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
●受粉後から種子成熟まで1年以上必要とする2年成の特徴に関与する候補遺伝子をさらに絞り込むことができた。 ●胚嚢発生に関与する遺伝子の発現が半年以上遅延することがマテバシイにおける受精遅延を引き起こし、最終的に受粉後から種子成熟まで1年以上必要とする2年成の特徴を獲得した可能性を示唆する結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、これまでに得られた結果を検証するために胚嚢発生過程の詳細な観察と定量PCRによる発現定量を行う予定である。また、花組織における発現分析も合わせて進めるため、花サンプルの採取とRNA抽出、遺伝子発現分析を実施することで、組織間で整合性のとれた発現が見られるかを検証する。
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