研究課題
初期人類の解剖学的筋骨格モデルの構築を継続し、そのモデルをほぼ完成させた。具体的には、アウストラロピテクス・アファレンシスの全身骨格 AL288-1(通称Lucy)のキャストの 3 次元形状データに基づいて、初期人類の解剖学的に精密な 3 次元全身筋骨格モデルを構築した。ヒト、チンパンジー、および他の初期人類化石の骨形状データを、土圧による塑性変形成分を除去しつつ、アウストラロピテクス化石の 3 次元形状データに合うように形状変形させることで、各骨形状の復元を行った。これにより欠損の補間も可能となった。そして先行研究による復元結果も活用して、全身復元骨格を完成させた。骨格系は関節で節分けした直鎖型剛体リンクとしてモデル化した。筋の付着位置や大きさは、ヒトやチンパンジーなどの現生種の形状よりおおよその範囲を推定し、一通りの復元を完成させた。また、二足歩行・走行するニホンザルの身体運動を、床反力計とモーションキャプチャシステムを用いて計測した結果を分析した。grounded runningがヒトの二足歩行では消失している要因を明らかにすることが、初期人類の二足歩行を復元する上で重要な鍵となることが明らかとなった。さらに、初期人類の関節受動弾性特性を推定するために必要な、関節可動特性計測の実験系を確立させた。また、単純力学モデルによる歩行のダイナミクス解析を継続し、超音波エラストグラフィに基づく下肢筋の受動弾性特性の分析と、ヒト二足歩行の運動学的分析の準備を開始した。
3: やや遅れている
歩行実験に必要な底床型トレッドミルのの仕様・設計検討の過程で、当初の予測に反し、モーターの定格を大きくする必要が生じ、要求仕様を満たす機構の設計が困難であることが明らかとなった。そのため、根本的に機構の設計を見直す必要が生じ、それに伴い装置の納品に遅れが生じたため。
初期人類の解剖学的筋骨格モデルを用いて、歩行の復元に取り組む。またそれに必要な関節可動特性計測の計測を行う。さらに、歩行の単純力学モデルに基づいて、初期人類の二足歩行・走行中の重心・体幹運動のマクロ挙動のパターンを網羅的に推定する。特に、ヒトは通常行わないが霊長類二足歩行で広く観察されるgrounded running(両脚支持期があるが力学的には走行となる移動様式)を初期人類が行っていた可能性について精査する。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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