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2018 年度 実績報告書

ソルガム子実収量の雑種強勢に機能するゲノムワイドな遺伝子ネットワークの解明

研究課題

研究課題/領域番号 17H01457
研究機関東京大学

研究代表者

堤 伸浩  東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (00202185)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードソルガム / 子実収量 / 小穂構造 / GWA解析 / QTL解析
研究実績の概要

本年度においては,ソルガムにおける子実収量の雑種強勢に機能する遺伝的メカニズムの解明に向け,収量に影響を及ぼす小穂や種子の構造に関連した形質(苞穎・小花の構造や種子形状など)に焦点を当て,昨年度に引き続き,遺伝資源や組換え近交系統を材料としたGWA解析やQTL解析を試行し,各形質に影響を及ぼす遺伝子座の検出を試みた.このうち,苞穎の表面構造や外穎の発生・成長に関わる遺伝子座については,その検出に成功するとともに,原因遺伝子の絞り込みに着手した.今後,他のイネ科作物における相同遺伝子の情報を手掛かりに,候補遺伝子の機能や発現調節機構を検証し,原因遺伝子の特定を重点的に進める予定である.また,GWA解析に使用した遺伝資源の中から,小穂あたり二粒の種子を稔実させる系統を発見し,この双子形質をもたらす原因遺伝子の同定に向け,QTL解析実施のための分離集団の作成や遺伝マーカーの整備を進めた。さらに,ソルガムにおけるGWA・QTL解析の精度向上に向け,遺伝資源のリシークエンスを通じた一塩基多型情報の高密度化や組換え近交系統の親系統を対象としたロングリードシーケンスによるゲノム構造変異情報の収集を推進し,その一部については,成果公表のための取りまとめを行った.これらの結果は,イネ科作物の子実収量を規定する遺伝基盤の多様性や共通性の理解を深めるだけでなく,子実型ソルガムにおける多収F1品種の迅速かつ精密な開発に利用可能な情報として高い価値を持つものと考えられる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前述の通り,本年度においては,ソルガムの子実収量に大きな影響を及ぼす,小穂や種子の構造に関連した形質を対象にGWA解析やQTL解析を試行し,関連する遺伝子座を数多く検出するとともに,双子形質を含めたいくつかの遺伝子座については,候補遺伝子の絞り込みに着手している.これらの子実収量を規定する遺伝要因の特定に向けた解析については,その精密化や迅速化に資するゲノム情報の整備や研究成果のとりまとめも含め,現在まで着実に進んでいる.一方,生殖器官の形成プロセスを対象とした網羅的な遺伝子発現情報や雑種強勢に関するゲノム予測モデルの精度検証のための大規模交雑集団の整備については,圃場試験での予期せぬ病害発生を始めとしたトラブルから,やや進捗が遅れている.今後,解析対象系統や栽培条件などを再検討したうえで,引き続きそれらの整備を進める予定である.

今後の研究の推進方策

次年度については,苞穎や小花の構造決定に関わる主働遺伝子や,それらを軸とした遺伝的なネットワークを同定するため,前述の双子化形質を含めた複数の形質の候補遺伝子について,詳細な時空間的発現パターンを精査するとともに,それらの機能を解析するための各種形質転換体の作成に取り組む予定である.特に,候補遺伝子の機能解析に必須となる形質転換体の作成は,これまでソルガムでは技術的な難易度が非常に高いと考えられてきたが,遺伝資源や組換え近交系統の中から,遺伝子導入効率や再分化能力に優れた系統の選抜に成功しており,安定的な形質転換系の確立に筋道が付きつつある.ただ,予期せぬトラブルが発生することも想定し,他のイネ科作物を用いた候補遺伝子の機能検定についても,上記の解析と並行して進める予定である.

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Effect of salt tolerance on biomass production in a large population of sorghum accessions2020

    • 著者名/発表者名
      Yamazaki K, Ishimori M, Kajiya-Kanegae H, Takanashi H, Fujimoto M, Yoneda JI, Yano K, Koshiba T, Tanaka R, Iwata H, Tokunaga T, Tsutsumi N, Fujiwara T.
    • 雑誌名

      Breeding Sci.

      巻: 70 ページ: 早期公開

    • DOI

      https://doi.org/10.1270/jsbbs.19009

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Comparison of shape quantification methods for genomic prediction, and genome-wide association study of sorghum seed morphology2019

    • 著者名/発表者名
      Sakamoto L, Kajiya-Kanegae H, Noshita K, Takanashi H, Kobayashi M, Kudo T, Yano K, Tokunaga T, Tsutsumi N, Iwata H.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 14 ページ: e0224695

    • DOI

      doi: 10.1371/journal.pone.0224695

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Comparison and Characterization of Mutations Induced by Gamma-Ray and Carbon-Ion Irradiation in Rice (Oryza sativa L.) Using Whole-Genome Resequencing2019

    • 著者名/発表者名
      Li F, Shimizu A, Nishio T, Tsutsumi N, Kato H.
    • 雑誌名

      G3 (Genes, Genomes, Genetics)

      巻: 9 ページ: 3743-3751

    • DOI

      doi: 10.1534/g3.119.400555

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Fine control of aerenchyma and lateral root development through AUX/IAA- and ARF-dependent auxin signaling.2019

    • 著者名/発表者名
      Yamauchi T, Tanaka A, Inahashi H, Nishizawa NK, Tsutsumi N, Inukai Y, Nakazono M.
    • 雑誌名

      Proc. Natl. Acad. Sci. USA

      巻: 116 ページ: 20770-20775

    • DOI

      doi: 10.1073/pnas.1907181116

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Curing cytoplasmic male sterility via TALEN-mediated mitochondrial genome editing2019

    • 著者名/発表者名
      Kazama T, Okuno M, Watari Y, Yanase S, Koizuka C, Tsuruta Y, Sugaya H, Toyoda A, Itoh T, Tsutsumi N, Toriyama K, Koizuka N, Arimura SI.
    • 雑誌名

      Nature Plants

      巻: 5 ページ: 722-730

    • DOI

      doi: 10.1038/s41477-019-0459-z

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ソルガムにおける茎柔組織髄化の分子メカニズム2019

    • 著者名/発表者名
      藤本 優, 米丸 淳一, 堤 伸浩
    • 雑誌名

      植物の生長調節

      巻: 54 ページ: 66-70

    • DOI

      https://doi.org/10.18978/jscrp.54.1_66

  • [学会発表] 遺伝子型×環境交互作用モデルによるソルガムのゲノミック予測2020

    • 著者名/発表者名
      石森元幸, 山﨑清志, 高梨秀樹, 鐘ヶ江弘 美, 藤本優, 米田淳一, 徳永毅, 藤原徹, 堤伸浩, 岩田洋佳
    • 学会等名
      日本育種学会・第137回講演会
  • [学会発表] 植物ミトコンドリアゲノム編集の試み: mitoTALENによるシロイヌナズナNAD7遺伝子の破壊2020

    • 著者名/発表者名
      綾部弘基, 日高朋美, 田村美子, 堤伸浩, 有村慎一
    • 学会等名
      日本育種学会・第137回講演会
  • [学会発表] パーティクルガンを用いたミトコンドリアゲノムへの外来遺伝子導入の試み2020

    • 著者名/発表者名
      中里一星,肥塚信也,堤伸浩,有村慎一
    • 学会等名
      日本育種学会・第137回講演会
  • [学会発表] たかきびRILのイオノームを用いたソルガム種子の元素含量に関するQTL解析2020

    • 著者名/発表者名
      ワセラフィオナ,藤原徹 ,山崎清志,高梨秀樹,堤伸浩,鐘ヶ江弘美,坂本亘
    • 学会等名
      日本育種学会・第137回講演会
  • [学会発表] mitoTALEN によるミトコンドリアゲノム編集:シロイヌナズナ ATP6-1・ATP6-2 遺伝子の冗長性の解析2019

    • 著者名/発表者名
      鶴田遊, 菅谷元, 柳瀬俊吾, 亘悠太, 堤伸浩, 有村慎一
    • 学会等名
      日本育種学会・第136回講演会
  • [学会発表] mitoTALENによるシロイヌナズナミトコンドリアゲノムNAD7の標的遺伝子破壊2019

    • 著者名/発表者名
      綾部弘基,日高朋美,田村美子,堤伸浩,有村慎一
    • 学会等名
      日本育種学会・第136回講演会
  • [備考] 世界初の植物ミトコンドリアのゲノム編集に成功

    • URL

      https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20190709-1.html

  • [備考] イネの水田での生育を支える通気組織形成の仕組みを解明

    • URL

      https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20190924-1.html

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公開日: 2021-01-27  

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