研究課題/領域番号 |
17H01461
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
江面 浩 筑波大学, 生命環境系, 教授 (00332552)
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研究分担者 |
矢野 亮一 筑波大学, 生命環境系, 助教 (00443044)
LOMBARDO Fabien 筑波大学, 生命環境系, 助教 (00607393)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トマト / 高糖変異体 / F-box タンパク質 / 糖蓄積 |
研究実績の概要 |
本年度は5項目について研究を行った。 1. 葉と茎頂分裂組織の発生制御因子の分布:発生制御因子とGFP の融合タンパク質をHWS変異体に発現し、これら因子の組織分布変化を調査予定であったが、HWSプロモーターにGUS遺伝子を連結した組換え体が作出できたことから、この組換え体を使って詳細に調べることとした。 2. F-boxタンパク質の細胞内分布:HWSプロモーターにGUS遺伝子を連結した組換え体を解析した結果、HWSは分裂組織で強く発現していた。詳細な解析を行うため、当該組換え体の固定化と増殖を行った。 3. SCF 複合体の構成因子同定: F-box タンパク質はN 末側に存在するF-box ドメインを介し、SKP1タンパク質と結合している。トマトゲノム内には、20 個のSKP1 遺伝子が推定された。遺伝子発現比較を行った結果、HWS変異体ではssk1が発現上昇、ssk4が全期的に発現減少していた。 4. 糖代謝関連遺伝子の発現変化:糖代謝関連遺伝子の発現変動を調べた。解析結果をもとに選抜したショ糖輸送体の1つとAGPaseL1の定量を行った結果、HWS変異体では、何れの遺伝子も交配後20日以降で野生型に比べ高い発現量を示した。 5. 果実の高糖性に関与する遺伝子の網羅的探索:野生型とHWS変異体を高糖誘導条件と通常栽培条件で、各果実発達段階の遺伝子発現量を調べた。3つの登熟段階の何れかで発現変動を示したのは11764遺伝子、すべての登熟段階で発現上昇したのは79、発現減少したのは186遺伝子であった。発現減少した遺伝子群には転写制御因子等が含まれるが、今回使用したサンプルは単為結果果実であるため、種子特異的な遺伝子が含まれている可能性もある。一方、既知の糖代謝関連遺伝子の発現変動を見たところ、AGPaseL1を含む糖代謝関連因子数十遺伝子が発現変動していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルス対策のため、2019年2月以降に実験の実施が困難となった。そのため、組換え植物を使って実施する予定であったF-boxタンパク質の細胞・組織内分布を調べる実験が一部実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は以下の研究を実施する。 1. HWS遺伝子を用いた相補実験:シロイヌナズナのAtHWSとトマトのSlHWS遺伝子をトマト変異体に導入・発現させ、表現型が野生型に回復することを予備的に確認している。2020年度はその表現型の詳細の確認を行う。 2. HWS遺伝子発現の細胞内分布解析:トマトのSlHWS遺伝子のプロモーターにGUS遺伝子をつないだベクターを野生型のトマトに導入・発現させ、作出した形質転換植物において遺伝子発現の細胞内分布の確認を行う。形質転換体は2019年度に作成できているので、2020年度は発現部位や時期の詳細な解析を行う。特に、糖蓄積過程の関連のある果実発達過程での発現部位の詳細な解析を行う。これによりSlHWS遺伝子と果実での糖蓄積の関連を明らかにする。 3. miRNAとホルモンシグナルの関連解析:2019年度までの解析から高糖性制御にmiRNAの関与が示唆された。同定したmiRNAはオーキシンシグナル伝達に関与が報告されているので、着果・果実発達過程でのオーキシンシグナル遺伝子の発現とオーキシン量の変化について解析する。 4. 糖代謝関連遺伝子の発現変化:HWS遺伝子が糖蓄積に関与する直接的な原因を明らかにするために糖代謝関連遺伝子の発現変動を調べる。本解析には野生型と変異体、過剰発現体を材料として用いる。定量RT-PCR により、果実糖度に関与する糖代謝関連遺伝子の発現量を定量する。 5. 果実の高糖度性の確立に関与する遺伝子の網羅的探索と検証実験:2019年度に続き、野生型と変異体を材料として用い、高糖度誘導条件と通常栽培条件において、各果実発達段階からmRNA を抽出し、各発達段階における遺伝子発現量を調べる。各材料、各栽培条件における発現量の比較を行い、HWS遺伝子によって制御される未知なる糖度関連遺伝子を単離し、その機能を検証する。
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