研究課題
「RNA干渉機構(RNAi)」による菌類ウイルスに対する自然免疫機構(複製阻害)を植物病原糸状菌で総合的に解析し、ウイルス防御機構の研究における植物・動物界に次ぐ第三極の形成を目指す。特に、動植物ウイルス・宿主系では知られていない「新奇RNAウイルス認識機構」、「RNAi誘導機構」、「AGO不要な抗ウイルスRNAi」の分子機構の解明を進め、抗ウイルス機構としての菌類RNAiをより深く理解する。A.宿主菌によるウイルス(分子パターン)認識、防御機構および宿主ウイルス防御への反撃機構の解明 1 菌類RNAi関連遺伝子のウイルス応答性とその機構解明 各種RNAウイルスの感染に対し、クリ胴枯病菌のRNAi鍵因子dcl2, agl2遺伝子の転写レベルで数十倍上昇することを示した。この現象が、白紋羽病菌では起こらないことを、明らかにした。クリ胴枯病菌では、RNAi誘導による干渉作用が生じる2種のウイルスの組み合わせを用いたが、白紋羽病菌では干渉作用は起こらず、共感染を許容した。2 子のう菌によるウイルス認識・RNAi誘導機構 クリ胴枯病菌dcl2, agl2の各種ウイルス感染による誘導は、本菌の核酸(分子パターン)認識機構の存在を強く示唆する(植物ではこのような大幅な発現上昇は認められない)。この認識・誘導機構の解明は3つのアプローチで進める。申請者らは、ウイルス感染応答性プロモーター領域の同定、関連宿主因子のスクリーニング系の開発・同定に成功した(Andika et al., PNAS, 2017)。B RNAウイルス/宿主菌の新奇せめぎ合いの解明 ウイルス由来RNAi抑制蛋白質の作用点の解明を目指し、CHV1 p29と相互作用する因子の同定を進めるため、組み替えp29抗体を作成した。GHP標識p29、wt p29相互作用性因子免疫沈降により同定していく。
2: おおむね順調に進展している
p29相互作用性宿主因子の同定には、困難も予想されるが、2種類の交代を用いて推進していく。
A.宿主菌によるウイルス認識、防御機構および宿主ウイルス防御への反撃機構の解明 H29年実施予定の課題のうち2、3は継続して行う。認識・誘導機構の解明は3つのアプローチとして、機能性Flag-DCL2、Flag-AGL2を用いて、相互作用する宿主あるいはウイルス蛋白質の網羅的探索を進める。同定される相互作用性因子は、標的破壊、相補試験に回す。ウイルス感染によるRNAi誘導あるいはDCL2、AGL2によるポジティブフィードバックに関与するに関与する因子の同定が期待される。4 自然免疫としてのRNAiのマイコウイルスの宿主域限定要因になっているか? これまで、クリ胴枯病菌標準菌株(EP155)で安定的に維持不能なウイルス2種、単分節型dsRNAウイルス(RnVV1)と11分節型dsRNAウイルス(MyRV2)を同定している。これらのウイルスが分離された野外菌株と標準菌株の間でウイルス感染によるRNAi誘導レベルが異なるという予備試験結果を得て、RNAi機構が宿主域を限定している仮説を立てている。これを、実証すべく申請書図6に示したレポーターアッセイ、課題1で同定される因子の菌株間の配列比較、さらには比較ゲノム解析を行う。B RNAウイルス/宿主菌の新奇せめぎ合いの解明 申請書課題3を引き続き進め、抑制蛋白質と相互作用する宿主因子の標的破壊、相補試験を実施し、機能解析を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 7件、 招待講演 3件)
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