研究課題
1.宿主菌によるウイルス認識、防御機構および宿主ウイルス防御への反撃機構の解明(鈴木・近藤・兵頭)機能性Flag-DCL2発現クリ胴枯病菌形質転換体の作成に成功し、抗Flag抗体を用いて免疫沈降・ペプタイドフィンガープリンティングを行った。その結果、クリ胴枯病菌由来の機能不明のタンパク質が同定された。これらの遺伝子の破壊株を作成、表現型を調べたところ野生型と大きな違いが認められなかった。従って、当初の目的の「新奇RNAウイルス認識機構」、「RNAi誘導機構」に関与する遺伝子の同定には至らなかった。しかし、RNAi誘導でのDCL2、によるポジティブフィードバック機構の解析中に、予想もしなかった大きな成果が得られた。SAGA関与のdcl2, agl2のウイルス感染あるいはdsRNA発現による転写誘導にDCL2が必須であることは既に明らかにした(Andika et al., PNAS, 2017)。DCL2は他の多数の宿主遺伝子の転写誘導にも関わることが明らかとなり、しかもそれらの遺伝子のいくつかは病徴発現の軽減に関与することが示された。すなわち、クリ胴枯病菌DCL2は通常の転写後抗ウイルスRNAサイレンシングで機能する他に、宿主遺伝子の転写の調節にも機能し、2層性の宿主防御で機能することが示された(Andika et al., PNAS, 2019)。2. マイコウイルス防御としてのRNAiでのAGOの役割: パラダイムシフト (鈴木・近藤)クリ胴枯病菌には、4つのAGO遺伝子(agl1~agl4)が存在する。Nussグループにより、agl2が抗ウイルスRNAiに関与することが示されているが(Sun et al., PNAS, 2009)、それらの機能冗長性は不明である。agl4の重破壊株を含む破壊株を作成し、ウイルス感染への影響を調査中である。
2: おおむね順調に進展している
上述のように計画した項目は、実施されている。
当初の目的の「新奇RNAウイルス認識機構」、「RNAi誘導機構」に関与する遺伝子ついては、SAGA転写活性複合体の成分、さらにはDCL2が必須であることを明らかにした。引き続き、他の因子の同定を目指して、ジェネティックスクリーン、免疫沈降により解析を継続する。大局的にウイルス防御機構の研究における植物・動物界に次ぐ第三極の形成を目指し、交付申請に記したような項目、RNAi抑制蛋白質の評価法の開発と新たな菌類ウイルス抑制タンパク質の同定、第3の宿主防御機構の同定、を実施していく。既に菌類で機能するRNAi抑制蛋白質の評価法を開発し、RNAi抑制タンパク質を持つCHV1 用いて本法が有効であることを確認していく。岡山大が保有する25を超える菌類ウイルスで、さらなる抑制蛋白質の同定を進めていく。さらに、ウイルス由来RNAi抑制蛋白質の作用点の解明を引き続き進めていく。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 5件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 7件、 招待講演 6件) 備考 (1件)
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