研究課題
1ウイルス由来RNAi抑制蛋白質の作用点の解明を引き続き進めた。GFP蛍光タンパク質をレポーターとして、菌類で機能するRNAi抑制タンパク質の評価法を開発した(Aulia et al., 2020) 。本手法を用いて、ハイポウイルス4(CHV4)にRNAi抑制があること、さらにその活性はシステインプロテアーゼp24にマップされることを明らかにした。このp24の自己切断箇所を生化学的に同定し、p24がすでに同定済みのCHV1 p29同様「dcl2, agl2の転写誘導阻害」に関与することを証明した(Aulia et al., 投稿準備中)。p29については、GFP蛍光タンパク質遺伝子をp29遺伝子中央に挿入することで、機能が欠損しないことが判明した。そこで、タグ標識p29を用いて「p29に相互作用する宿主蛋白質の網羅探索」のために免疫沈降試験を行い、相互作用タンパク質の質量分析を行なっている。2新規ウイルス防御機構、新規ウイルスによるRNAiへの反撃機構の解析も試みた。1)菌類宿主のDicerは、他の真核生物と同様にウイルスdsRNAの切断を担うが (Chiba & Suzuki, PNAS 2015)、宿主菌の多数の遺伝子の転写亢進にも必須である (Andika et al., PNAS 2017)、2)その宿主菌遺伝子の中には、Dicer遺伝子自身(フィードバック機構)、ウイルス病徴の軽減につながる遺伝子も含まれる、3)1)の転写調節には真核生物に広く保存されているSAGA複合体とダイサーが必須であることを示した (Andika et al., PNAS 2019)。これは、ウイルス複製阻害(RNAi)と転写調節を伴う病徴軽減(第三の抗ウイルス機構)の少なくとも2層のウイルス防御にダイサーが関与する(デュアル機能)ことを示すブレイクスルーである。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の目的「抗ウイルス機構研究の第三局の拠点形成」に向けて予想を超えた大きな進展があった。新規ウイルス防御機構として、「RNA代謝系」関連酵素(5’-3’分解に関わるXrn1遺伝子と3’-5’分解に関わるエクソソーム)が関与する防御機構」を想定していた。しかし、それよりも科学的インパクトの大きい「ダイサーが関与する2層のウイルス防御に機構(デュアル機能)」を証明することに成功した。すなわち、ダイサーがこれまで知られていたウイルス複製阻害(RNAi)と未知の転写調節を伴う病徴軽減(第三の抗ウイルス機構)の少なくとも2つの抗ウイルス防御機構に関与することが明らかとなった。また、第三の抗ウイルス機構には、ダイサーがポジティブフィードバックプレイヤーと転写コアクティベーターであSpt-Ada-Gcn5 acetyltransferase (SAGA)転写が必須であることも示された。さらには、菌類でのRNAサイレンシング抑制タンパク質同定法の開発とそれを用いたCHV4からの抑制タンパク質p24の同定に成功した。新たに開発した手法により、同じウイルス科(ハイポウイルス科、パルティティティウイルス科)に属するウイルスの間でも、そのダイサー転写誘導抑制能に大きな違いが認められることを明らかにした。これらの一連の成果から、上記の判断に至った。
当初の目的のA「新奇RNAウイルス認識機構」、B「RNAi誘導機構」に関与する遺伝子ついては、引き続き、他の因子の同定を目指して、ジェネティックスクリーン、免疫沈降により解析を継続する。また、AGO非依存的ダイサー依存的抗ウイルス防御機構の確立(パラダイムシフト)を目指した研究も進める。Bでは、新たに同定したCHV4RNAサイレンシング抑制タンパク質も解析に含める。「AとBの成果の統合による植物病理学への応用・展開」では、RNAi機構と菌糸融合不和合性機構の両方欠損した免疫不全植物病原糸状菌系統の作出を目指す。最終年度であり、以上を通じてマイコいミュニティーの理解とマイコウイルス研究の第3極の形成という大目標の達成を目指す。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 13件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 13件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 8件、 招待講演 4件) 図書 (2件)
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