研究実績の概要 |
昨年度までの研究により、ヒト結腸細胞株を用いた物質透過性試験ならびに経上皮電気抵抗測定により、油脂酸化物アクロレインによるバリア機能障害が、イソマルトメガロ糖を共存させることで緩和されること、すなわちイソマルトメガロ糖は油脂酸化物による上皮バリア障害を抑制することが示唆された。また、動物試験において、経口投与したケルセチンの吸収が、イソマルトメガロ糖を同時に投与することで高められることが示された。今年度はイソマルトメガロ糖の腸管バリア機能への影響に関して、アクロレイン以外の素材を用いたバリア機能障害モデルにて評価した。 ヒト由来結腸上皮細胞株Caco-2 単層膜を用い、いくつかの脂質酸化生成物を被験物質としてスクリーニングを実施したところ、アクロレインに加えtrans,trans-2,4-decadienal ならびにエタノールによるタイトジャンクション透過性上昇すなわちバリア機能障害が観察された。同試験系にてイソマルトメガロ糖を共存させると、trans,trans-2,4-decadienal、にエタノールによるタイトジャンクション透過性上昇は抑制された。このことから、イソマルトメガロ糖はアクロレイン誘導性だけでなく種々の化学物質誘導性のバリア機能障害を緩和することが示された。 消化管ホルモン(GLP-1)分泌への影響を観察するため、イソマルトメガロ糖を添加した飼料を5週間ラットに摂取させた。4週後に実施した耐糖能試験ではメガロ糖摂取群において、コントロール群よりも血糖応答が低下する傾向が見られたが、GLP-1分泌応答もイソマルトメガロ糖摂取群において低下が見られた。一方で空腹時の血中GLP-1濃度はメガロ糖摂取群で高い傾向が見られた。これらの結果よりメガロ糖の摂取が消化管ホルモンGLP-1の産生や分泌に影響することが示唆された。
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