研究課題/領域番号 |
17H01478
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
五十嵐 康人 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (90343897)
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研究分担者 |
大河内 博 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00241117)
保坂 健太郎 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (10509417)
北 和之 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (30221914)
齊藤 保典 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (40135166)
牧 輝弥 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (70345601)
白石 浩一 福岡大学, 理学部, 助教 (80299536)
反町 篤行 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (60466050)
羽田野 祐子 筑波大学, システム情報系, 教授 (60323276)
川端 康弘 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 研究官 (90742726)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バイオエアロゾル / 森林生態系 / 降水現象 / 蛍光ライダー / 有機物トレーサー / 放射性セシウムトレーサー / 真菌類 / 放出フラックス |
研究実績の概要 |
従来顧みられなかった降水によるエアロゾル発生現象に着目し,里山や都市近郊にて総合観測を実施し,その発生や拡散の実態把握と発生物質の性状解明を狙っている。特に森林生態系由来エアロゾルの評価を目指し研究を進めた。 ・アクセスが容易で,バイオエアロゾル発生源の真菌類観察データのある筑波実験植物園にて観測を実施した。フィルター試料からDNA抽出を行った。また,同時期の植物園内で,きのこ発生状況を調査しDNA抽出も行った。子実体は乾燥し,標本として菌類標本庫に保管した。 ・初夏季,秋季に植物園にて,現場サンプリング,粒子蛍光観測装置,緩和渦集積法によるフラックス観測,ゾンデやヘリコプターを用いた上空までの観測による集中観測を実施した。集中観測時には周辺の基礎気象データを収集した。秋季観測では,担子菌きのこ子実体からの胞子放出現象の野外観測映像を初めて得た。大気エアロゾルの遺伝子配列(16S rRNA,ITS領域)から,氷核活性微生物の同種が,乾燥地や都市部に比べ,森林地帯で頻繁に検出された。 ・蛍光ライダーを335nmレーザー,25㎝径望遠鏡などを基本構成として開発し,生葉クロロフィルやスギ花粉などの日中観測により,動作特性を確認した。観測結果との照合のため,30種類以上のエアロゾル候補物質のEEM特性を計測し,データベース化した。都市上空のライダーと成分組成の同時観測を実施し,強い蛍光が観測された日にCaSO4等,蛍光性の人為起源粒子が多く観測された。 ・浪江町と植物園で夫々,燃焼または,胞子由来の有機マーカーのレボグルコサン,糖アルコールを観測した。植物園では,雨天時にCs濃度が高く,マンニトールが類似挙動を示した。レボグルコサンは晴天時に高く,アラビトールは晴天・雨天時で差はない。浪江町では晴天時にCs濃度が高く,レボグルコサンが類似挙動を示したが,雨天時には検出されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・集中観測が春季と秋季に実施でき、バイオエアロゾルデータの蓄積が進んでいる。特にバイオエアロゾルのうち真菌類とバクテリアについて、それぞれ、科博と金沢大で分析が進んでいるのは大きな成果である。 ・蛍光ライダーの開発が順調に進捗している。 ・緩和渦集積法の装置開発・組み立てが順調に推移し、フラックス観測を実現できた。 ・野外での担子菌きのこ子実体からの胞子放出の撮像が実現できた。 ・有機物トレーサーと放射性Csトレーサーとの時間変動の比較が実現できた。
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今後の研究の推進方策 |
・バイオエアロゾルの種同定だけではなく,量的な評価,すなわちフラックスの解明,加えて放出メカニズムの解明を目指して推進を図りたい。 ・降水時の胞子発生の映像の撮影に臨みたい。 ・また,降水による発生に担子菌類だけではなく,子嚢菌類が寄与している可能性が出て来ており,現状のグループ外の専門家を招くことも検討する。
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