研究課題/領域番号 |
17H01480
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
寺本 好邦 京都大学, 農学研究科, 准教授 (40415716)
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研究分担者 |
北口 公司 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (50508372)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | セルロース / キチン / キトサン / ナノファイバー / バイオセンシング / 細胞培養 / マイクロ流体ペーパー分析デバイス(μPADs) |
研究実績の概要 |
A.紙ベースの分析用デバイスであるマイクロ流体ペーパー分析デバイス(μPADs)は,安価,廃棄が簡便,持ち運びが容易といった利点を持ち,途上国の医療診断やホームヘルスケア等への応用が期待されている。本研究では,成膜すると優れた酸素バリア性を有するフィルムが得られるTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN)に着目して,μPADsへの応用を目指した研究を行っている。前年度までに,TOCNを用いて不安定分子を紙基板上で安定的に保持し,農薬検出用μPADsの作製に成功した。本年度は,TOCNの性状による不安定分子保存能の違いを調査した。μPADs設計時のTOCNの役割を明確化するために,繊維径の異なる手抄き紙を調製して,TOCNによる流速制御のデータを取得した。 B.本年度は,表面修飾キチン系ナノファイバー(NF)を使った高伸縮性の細胞接着ゲルについて様々な成果を得た。このようなゲルは取り扱いが容易であり,インクジェットや3Dプリンタ等で立体的に成形できる可能性がある。この目的のために,キチン系NFの表面にビニル重合性官能基を導入し,得られる表面修飾NFを水系でN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)モノマーと共重合した。キトサンNFを無水マレイン酸で修飾すると,NIPAMとの共重合により伸縮性ゲルが得られた。しかしながらマウス線維芽細胞の接着性はキトサンNFそのものよりも大きく低下した。これはNFがアニオンかされたことによるものと示唆された。キチンNFの表面をカチオン化すると同時に重合性官能基を導入すると,最終的に所望の細胞接着性高伸縮ヒドロゲルを得られた。得られたゲルに付着した細胞は,ポリNIPAMの温度応答性に起因して,冷却することによって剥離させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者の岐阜大から京大への転任に伴い,Aでは担当の学生の変更があったが,比較的スムーズに引き継ぐことができた。Bは主として岐阜大に残った学生と連絡を密にとり,高伸縮細胞接着ゲルという,当初の想定を上回る材料創製を例証することができた。その他にも,キチン系ナノファイバーの表面脱アセチル化効果のデータも順調に収集できた。
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今後の研究の推進方策 |
Aでは,μPADs設計におけるTOCNの役割のうち,流路設計に必要な定量的データを得て成果をまとめたい。Bでは,これまでに得ているキチン系ナノファイバーの脱アセチル化挙動とその結晶性と細胞接着性について,データを補完しながら原著論文として発表したい。
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