研究課題/領域番号 |
17H01481
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤井 義久 京都大学, 農学研究科, 教授 (10173402)
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研究分担者 |
簗瀬 佳之 京都大学, 農学研究科, 助教 (00303868)
栗崎 宏 富山県農林水産総合技術センター, 富山県農林水産総合技術センター木材研究所, 課長 (20446644)
辻 幸一 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (30241566)
吉村 剛 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (40230809)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 共焦点蛍光X線 / ミリ波 / 保存処理木材 / 非破壊検査 |
研究実績の概要 |
本課題は以下の6段階で構成される。1)保存処理木材の有効成分分布と処理条件との関係の解明として蛍光X 線顕微鏡を用いて、断面での元素分布を測定し、開発装置の希求条件を明らかにする。含水率の影響も明らかにする。2)共焦点型蛍光X線方式による木材表層から10mm までの銅等の有効成分の濃度マッピングの可能性の可能性を解明する。3)ミリ波レーダ技術によって木材の水分状態や内部欠点の非破壊検出の可能性を明らかにする。4)(主目的)ミリ波検出系からの水分分布データによって蛍光X 線データを補正し木材中の有効処理成分の高精度濃度マッピング手法を確立する。5)蛍光X 線技術とミリ波技術を融合させた非破壊診断装置の基本設計を行う。6)データ分析とマッピング結果の2次元、3次元データのパターン認識による高速で大量の個別品質管理技術を構築する。 平成30年度は、前年度に引き続き3)を実施し、4)までを実施した。具体的には、3)ミリ波レーダ技術による木材内部の水分状態や材質変動や欠点の非破壊検出の可能性を解明した。10から20GHz の電磁波によるレーダ方式によって木造壁(150㎜厚)内部の水分状態や構造の解析を実施した。また50から100GHz の周波数について木材の表面から20mm 程度までの水分分布や節などの欠点検出の可能性を検討した。さらに4)ミリ波によって得られた水分データによる蛍光X 線データの補正による高精度濃度マッピングの可能性の検討に着手した。また蛍光X 線分析による木材の元素検出では、含水率が高いと検出性能が低下する。水溶性の保存処理剤の利用における水分や材質の変動に由来して水分分布の変動の影響についても検討を開始した。また共焦点蛍光X線の原理を用いた材深部でのターゲット元素の検出については、共焦点から共焦線に検出領域を拡大して、新規な装置を試作し、検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、以下の6段階で構成される。1)保存処理木材の有効成分分布と処理条件との関係の解明として蛍光X 線顕微鏡を用いて、断面での元素分布を測定し、開発装置の希求条件を明らかにする。含水率の影響も明らかにする。2)共焦点型蛍光X線方式による木材表層から10mm までの銅等の有効成分の濃度マッピングの可能性の可能性を解明する。3)ミリ波レーダ技術によって木材の水分状態や内部欠点の非破壊検出の可能性を明らかにする。4)(主目的)ミリ波検出系からの水分分布データによって蛍光X 線データを補正し木材中の有効処理成分の高精度濃度マッピング手法を確立する。5)蛍光X 線技術とミリ波技術を融合させた非破壊診断装置の基本設計を行う。6)データ分析とマッピング結果の2次元、3次元データのパターン認識による高速で大量の個別品質管理技術を構築する。 原理確認から実用化に至るまでの流れのうち、原理確認については十分な成果をあげることができた。すなわち共焦点蛍光X線検出の原理によって、材料の深部におけるターゲット元素(ここではCu)を選択的に検出することについては原理を確認できた。しかし、現行の装置では、表面から2mm程度までの深さまでしか評価することができない。また面状の高速計測には向かない。このため焦点領域を点から線に拡大し、装置のパワーを向上させる必要がある。 またX線のデータについて、含水率補正をかけるアイデアについては、ミリ波を用いて計測領域の水分を非接触・非破壊で高速評価できる道筋はみえたが、補正のための基礎データの取得については遅れがみられる。
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今後の研究の推進方策 |
3年の研究計画について、最初の2年で開発課題を実施するための原理確認は達成できたが、同時に実用化に向けての課題も明らかになった。材料深部におけるターゲット元素の選択的な検出を非接触・非破壊で、高速で実施する手法について、より実用化に向けた具体的な課題について最終年度に取り組む予定である。 また成果を内外の学会などで公表するとともに、新規得られた知見について、特許化しうる成果については出願を検討する。 本研究課題では、木材保存処理材の製造工程における非接触、非破壊での高速全数検査を最終目的に基礎及び実用化研究を展開した。ここで木材保存処理材とは防腐や防蟻といった生物劣化対策を施した材料をさすが、本研究で開発した手法はさらに応用的な仕向け先として、難燃・不燃化処理した木材の処理度の評価、木材の含水率分布の評価、節などの材質的な特徴の検出にも利用しうる。さらにこれまでのミリ波での研究成果と協焦点X線分析とを組み合わせると、文化財に対する非破壊的で定性・定量分析に関する新規なアプローチへの展開も期待される。これらの可能性を実現するために本課題で取り組んでいるような検出原理の確認に関する基礎的知見の獲得は重要で、これを継続することによって将来大きな展開が期待される。
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