研究課題
水産増養殖の発展を妨げている大きな要因は魚病の問題である。特に、近年、養殖魚種の拡大に伴って、これまで話題にならなかった疾病や新しい病原体による被害が大きな問題となってきている。一方、トラフグは他の多くの海産養殖魚種と異なり、多くの疾病に強いことが知られている。申請者は、これまでに、トラフグを中心とした魚類の免疫系の解明を行い、その研究成果を利用して多くの免疫賦活剤の開発を行い魚病の制御に貢献してきた。本研究は、トラフグの細菌感染におけるサイトカインを中心とした自然免疫機構の役割を他の魚種と比較することによって、トラフグの耐病性のメカニズムを明らかにし、その知見を利用してサイトカインを用いた新しい免疫賦活剤を開発し、魚病を制御することを目的としている。本年度は、マルチプレックスRT-PCRによるサイトカイン遺伝子の測定系の確立に取り組み、特異性の確認できなかったプライマーについては再設計を行い、全サイトカイン遺伝子を特異的に増幅できるプライマーの構築を行った。その結果、炎症、抗炎症、抗ウイルス等の免疫応答を制御する13種類のサイトカイン遺伝子を同時に検出できるアッセイ系の構築に成功した。また、今年度は魚類特有のサイトカインであるIL-17A/FおよびIL-17Nのメダカにおける遺伝子基盤を明らかにした。また、ゲノム編集によりIL-17A/F変異メダカを作製して、その腸管におけるトランスクリプトーム解析の結果について詳細に解析中である。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、マルチプレックスRT-PCRによるサイトカイン遺伝子の測定系の確立に取り組んだ。まず初めに、遺伝子データベースより、ヒラメのサイトカイン遺伝子(炎症、抗炎症、抗ウイルス等の免疫応答を制御するもの13種類)を選び出し、キメラプライマーの作成を行った。続いて、各プライマーによるシングレット反応を行い、特異性の確認を行った。特異性の確認できなかったプライマーについては再設計を行い、全サイトカイン遺伝子を特異的に増幅できるプライマーの構築を行った。さらに、当該プライマーを混合した反応;マルチプレックス反応を実施し、全サイトカイン遺伝子を同時に検出できるプライマー濃度の至適化を行った。その結果、13種類のサイトカイン遺伝子を同時に検出できるアッセイ系の構築に成功した。次年度は、本アッセイ系を用い、病原体感染魚におけるサイトカイン遺伝子の発現動態を解析する予定である。また、今年度は魚類特有のサイトカインであるIL-17A/FおよびIL-17Nのメダカにおける遺伝子基盤を明らかにした。また、ゲノム編集により2系統のIL-17A/F変異メダカの作製成功した。その腸管における次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析を行った。現在、その内容について詳細に解析中である。
今年度作製したマルチプレックスRT-PCRアッセイ系を用い、病原体感染魚におけるサイトカイン遺伝子の発現動態を解析する予定である。さらに、ヒラメおよびトラフグの血清中に自然免疫応答における違いを明らかにするために、溶菌活性などの自然免疫応答に関する実験を行う。また、IL-17Nの組換えタンパク質の構築を行い、IL-17A/F変異メダカの腸管におけるトランスクリプトーム解析をまとめる。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件)
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