研究課題/領域番号 |
17H01486
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
酒井 正博 宮崎大学, 農学部, 教授 (20178536)
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研究分担者 |
河野 智哉 宮崎大学, 農学部, 准教授 (60527547)
引間 順一 宮崎大学, 農学部, 准教授 (70708130)
竹山 春子 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60262234)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | サイトカイン / 魚病細菌 / ヒラメ / トラフグ / 免疫応答 / メダカ |
研究実績の概要 |
水産増養殖の発展を妨げている大きな要因は魚病の問題である。一方、トラフグは他の多くの海産養殖魚種と異なり、多くの疾病に強いことが知られている。申請者は、これまでに、トラフグを中心とした魚類の免疫系の解明を行い、その研究成果を利用して多くの免疫賦活剤の開発を行い魚病の制御に貢献してきた。本研究は、トラフグの細菌感染におけるサイトカインを中心とした自然免疫機構の役割をヒラメなどの他魚種と比較することによって、トラフグの耐病性のメカニズムを明らかにし、その知見を利用してサイトカインを用いた新しい免疫賦活剤を開発し、魚病を制御することを目的としている。今年度は、まず昨年度作製したマルチプレックスRT-PCRアッセイ系を用い、Edwardsiella tarda感染トラフグおよびヒラメにおけるサイトカイン遺伝子の発現動態を解析した。E. tardaはトラフグに感染しないため、ヒラメと同程度の菌量を接種して試験を行った結果、トラフグとヒラメの頭腎においていくつかのサイトカイン遺伝子の発現パターンに明らかな違いが見られた。さらに、同実験条件でE. tardaで処理したヒラメおよびトラフグの血清中に自然免疫応答における違いを明らかにするために、各個体の血清を採取し、各試験に備えた。一方、新規サイトカイン遺伝子の機能解明のために、前年度作製したIL-17A/F1変異メダカの腸管におけるトランスクリプトーム解析のデータを詳細に解析した結果、免疫関連遺伝子群およびタンパク質・脂質分解酵素遺伝子群の発現が、野生型メダカの腸管と比べて大きく減少していた。以上のことから魚類のIL-17A/F1の腸管での役割は、哺乳類のIL-17AやFに類似していることが推察された。そこで、今後はIL-17A/F1のと腸内フローラの関係性について検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の報告書に示した実験計画に従って、次の実験を実施した。今年度は、まず昨年度作製したマルチプレックスRT-PCRアッセイ系を用い、Edwardsiella tarda感染トラフグおよびヒラメにおけるサイトカイン遺伝子の発現動態を解析した。E. tardaはトラフグに感染しないため、ヒラメと同程度の菌量を接種して試験を行った。その結果、E. tardaヒラメの頭腎では、同様に処理したトラフグと比べ、IL-1β、G-CSF、IL-12p35/p40遺伝子などのサイトカイン遺伝子の発現が高くなっており、両魚種間の遺伝子発現パターンにおいて明らかな違いが見られた。さらに、同実験条件でE. tardaで処理したヒラメおよびトラフグの血清中に自然免疫応答における違いを明らかにするために、各個体の血清を採取した。これらの試料を用いて、令和元年度は溶菌活性や病原菌に対する毒性試験などを実施する。一方、新規サイトカイン遺伝子の機能解明のために、前年度作製したIL-17A/F1変異メダカの腸管におけるトランスクリプトーム解析のデータを詳細に解析した結果、免疫関連遺伝子群(トランスフェリンなど)およびタンパク質・脂質分解酵素遺伝子群(ホスホリパーゼなど)の発現が、野生型メダカの腸管と比べて大きく減少していた。以上のことから魚類のIL-17A/F1の腸管での役割は、哺乳類のIL-17AやFに類似していることが推察された。そこで、今後はIL-17A/F1のと腸内フローラの関係性について検討する必要がある。最後に、機能が未知であるIL-17N組換えタンパク質の作製を試みたが、IL-17N遺伝子の発現量が非常に少ないため、タンパク質産生用の発現プラスミドの構築が上手くいっておらず、現在も継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究計画として、上述したようにE. tardaで処理したヒラメおよびトラフグの血清を用いた溶菌活性や病原菌に対する毒性試験などを実施する。これと同様に、Streptcoccus iniaeを用いてヒラメおよびトラフグを処理し、遺伝子発現解析を行い、同様の血清を用いた自然免疫応答に関するバイオアッセイを行う。一方、作製したIL-17A/F1の役割をより詳細に明らかにするために、IL-17A/F1-KOメダカの腸管についてメタゲノム解析を行い、腸内細菌叢へのIl-17A/F1の役割を明らかにする。また、IL-17A/F経路をより詳細に理解するために、IL-17A/F1(リガンド)の受容体であると示唆されているIL-17受容体A遺伝子についてもクローン化を行い、ゲノム編集による変異メダカの構築を試みる。最後に、前年度に継続してIL-17Nの組換えタンパク質の構築を行う。
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