研究実績の概要 |
ムサシトミヨに関しては、1.5歳のドナー個体の生殖細胞を、イバラトミヨの孵化後7日齢の仔魚腹腔内に約10,000細胞ずつ移植することで、処理個体の約70%程度の生殖腺にドナー由来の生殖細胞が取り込まれることが明らかとなった。 タナゴ類に関しては、ニホンバラタナゴ(絶滅危惧1A)、カゼトゲタナゴ(絶滅危惧1B)、およびヤリタナゴ(準絶滅危惧)から単離した生殖細胞3,000個程度を、dnd遺伝子に対するMOを注入することで不妊化処理を施した4日齢のタイリクバラタナゴの孵化仔魚の腹腔内へと移植した結果、これらのタイリクバラタナゴ宿主は雌雄ともに成熟し、すべての組み合わせでドナー由来の卵および精子を生産することが明らかとなった。またこれらの配偶子を人工授精に供することで正常な形態を示すドナー種の次世代を生み出すことが可能であった。これらすべての実験において、得られた次世代はDNAレベルでもドナー種と同一のゲノムを有していることを確認済みである。しかし、ヤリタナゴのような大型卵を産する魚種の場合、タイリクバラタナゴの産卵管を通過する際に、ドナーの卵が物理的に傷害を受ける例が多く見受けられ、この場合は雌宿主を開腹することでドナー種の卵を取り出す必要が生じた。 また、タイリクバラタナゴをモデルに用い、ドナー種の精巣を超低温保存することを試みた。その結果、1.3MDMSO、0.1Mトレハロース、1.5%ウシ血清アルブミンを含む液中で緩慢凍結を施すか、15%DMSO、15%エチレングリコール、0.2Mトレハロース、20%ウシ胎児血清を含む溶液中でガラス化処理を行うことで、精原細胞を効率よく保存することが可能であり、これらの精原細胞をタイリクバラタナゴ宿主へと移植することで、ドナー由来の機能的な卵および精子の両者を生産可能であることが明らかとなった。
|