研究課題
【研究1】緑色光の照射期間と成長(研究計画調書の飼育実験1と分析実験1に対応)[目的]ホシガレイにおいて緑色光照射時間の長短と成長の関係および内分泌と代謝に対する効果を明らかにする。[結果]ホシガレイに対して緑色光を3,6,12時間照射して28日間飼育した。その結果,緑色光照射により摂餌量,胃充満度及び肥満度が増加することを認めた。すなわち,緑色光の成長促進効果は照射時間依存的であることが示された。また,メラニン凝集ホルモン遺伝子の発現が照射時間の長さに依存して高まることが認められた。一方,緑色光と血中インスリン動態の間に相関は認められなかった。【研究2】緑色光の強度と成長(研究計画調書の飼育実験2と分析実験1に対応)[目的]緑色光の成長促進効果における光強度依存性の有無を調べる。[結果]成長とホルモン遺伝子発現に対する緑色光の強度の効果を調べた。その結果,緑色光照射区のホシガレイ全長の日間成長率は対照群区に比べて高かったが,光強度依存性は認められなかった。脳内におけるメラニン凝集ホルモン遺伝子の発現量は光強度依存的に増加した。脳下垂体におけるソマトラクチン遺伝子の発現量は光強度依存的に減少した。【研究3】緑色光と内分泌・成長・肥満度(研究計画書の飼育実験4と分析実験2に対応)[目的]筋肉成分の分析をはじめとして,緑色光と食欲・成長関連ホルモン,アミノ酸およびグルコース輸送系の関連を明らかにする。[結果]緑色光照射下で飼育したホシガレイの筋肉において,遊離アミノ酸には対照区の間に差異は認められなかった。これらの成果は,緑色光の成長促進効果のメカニズム解明を,筋肉そのものではなく,行動を視野に入れて中枢の内分泌系および神経系において追求するべきであることを示唆する。一方,緑色光照射によって皮膚における黒色素胞刺激ホルモン前駆体遺伝子の発現が,インビトロで高まるとの知見を得た。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度の交付申請書に記載した研究計画が,概ね予定どおり伸展したため。
申請時の研究計画調書に記載した研究項目は次の5点である:①照射時間と光強度,②水温依存性,③脳と脳下垂体のホルモン,④消化器系ホルモン,⑤肥満度とメタボローム。過去2年間の研究成果にもとづく,今後の研究の推進方策は以下のとおりである。「①照射時間と光強度」については,さらに推進するべきとの知見を得た。「②水温依存性」については目的を達したため終了とする。「③脳と脳下垂体ホルモン」については,皮膚で発現する脳下垂体ホルモン遺伝子の作用を解明するという新たな課題が生じた。「④消化器系ホルモン」については緑色光との関連性が低いことを認めたため終了とする。「⑤肥満度とメタボローム」については,代謝ではなく行動に力点をおくべきとの知見を得た。すなわち,①,③および⑤に力点をおく。
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General and Comparative Endocrinology
巻: 271 ページ: 82-90
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