研究課題/領域番号 |
17H01496
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
森 也寸志 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (80252899)
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研究分担者 |
松本 真悟 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (00346371)
金子 信博 福島大学, 農学系教育研究組織設置準備室, 教授 (30183271)
大澤 和敏 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (30376941)
辻本 久美子 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (80557702)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 土壌劣化 / マクロポア / 浸透現象 / 炭素固定 / 植生回復 |
研究実績の概要 |
土壌流亡は営農に影響を与えるだけでなく,有機物の消失としてもとらえられ,土壌環境に悪影響を与える.透水性の低い層であるクラストの発生がその原因の一つであり,強雨時の雨滴の衝撃,土壌間隙の目詰まりにより生じる.対策として鉛直孔隙に繊維状物質を挿入する人工マクロポアを提案し,流亡対策と成り得るデータが示したが,さらに労力軽減のために線状型マクロポアを提案したのでその効果を報告する.線状マクロポアは従来の穴の代わりに深さ30cm程度の溝を引き,サトウキビ残渣を鋤き込む.線状型マクロポアの下方浸透促進による表面流出・土壌流亡を抑制し,もって表層土壌の保全をすることを研究の目的とした. 供試土として沖縄県石垣島のサトウキビ圃場から採取した土壌をライシメータに充填し,現場と同じ傾斜3%で設置し,時間20㎜の降雨を4時間降らせ,降雨終了24時間後に同様の条件で再度雨を降らせた.対照区として耕起区,植物残渣を表層に残す不耕起区,線状型マクロポア区,中空溝切のみの溝切区を用意し,表面流出,下方排水,土壌水分,流出土砂量を測定した. 実験の結果,表面流出量は耕起区で最も多く,次に不耕起区で多かった.線状型マクロポア区では表面流出は発生しなかった.溝切区では溝構造の崩壊が起こり,まもなく目詰まりを起こした.圃場調査では溝切区において目詰まりが発生することにより表面流出,土砂流出が増加すると推定されていたが、今回の結果から降雨の早い段階で構造そのものが崩壊している可能性が示された.これは現場圃場で観察されていたこととよく一致し, その際に表層土壌から奪われる有機物の量は,保全的活動で表層土壌で蓄積される有機物量とほぼ同じくらいであることがわかった.土壌の劣化原因として表土流亡が知られているが,有機物の消失についても非常に大きなインパクトを持つことが明らかであった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下方浸透が有機物蓄積のためにプラスに働くことはこれまでの研究で明らかであったが,逆に土壌の流亡が土壌環境に与える影響を精査すると,保全的活動によって蓄積される有機物量をキャンセルしてしまうほどの量であることがわかり,浸透改善にプラスして土砂の流亡防止することが肝要であるとわかったから.
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今後の研究の推進方策 |
得られた成果を広域の評価につなげ,大陸レベルでの有機物の生成と消失に関わる因子を明らかにしていく.
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