研究課題/領域番号 |
17H01499
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
椎名 武夫 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (40353974)
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研究分担者 |
黒木 信一郎 神戸大学, 農学研究科, 助教 (00420505)
椎名 隆 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (10206039)
中村 宣貴 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (50353975)
永田 雅靖 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, ユニット長 (60370574)
タンマウォン マナスィカン 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (90763673)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 網羅的解析 / トランスクリプトーム / メタボローム / 品質変化 / モデル化 |
研究実績の概要 |
4分割し異なる条件で光照射処理されたキャベツの中心部分の試料について、次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子発現解析(RNA-Seq)を実施した。このデータをマイクロアレイデータ解析ソフトウエア(GeneSpring、アジレント)に取り込み、遺伝子発現プロファイリングを実施した。また、同一部位から採取した試料について、クロロフィル含有量を調査し、クロロフィル含有量を高める光照射条件を明らかにした。さらに定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)を実施し、関与遺伝子を特定するとともに、クロロフィル蓄積のモデルを構築した。 エダマメについて、網羅的遺伝子発現解析結果に基づき、品質調査結果と関連する遺伝子の探索・抽出を行った。抽出された遺伝子を含む複数遺伝子についてqRT-PCRを実施し、鮮度定価指標となることが報告されているラフィノース系オリゴ糖であるスタキオースの蓄積に直接的に影響を及ぼすと考えられる遺伝子を特定した。 異なる包装条件で振動処理したブロッコリー試料について、マイクロアレイを用いて網羅的遺伝子発現解析を実施し、GeneSpringによるプロファイル解析を行った。また、レタスを対象に、接触刺激応答遺伝子の発現解析を行い、モデル植物シロイヌナズナの接触刺激応答との比較を行なった。 異なるガス条件で貯蔵したブロッコリー花蕾のRNA-Seqを行った。Gene ontology解析、代謝経路解析を行なった。 さらに、メタボロミクスソフトウェア(MS-DIAL)、MATLABのStatistics and Machine Learning ToolboxやBioInfomatics Toolboxを導入して、遺伝子発現プロファイルと網羅的代謝産物解析で得られたデータを用いて相互関係を解析するためのデータクレンジング法の検討を行い、数理モデル開発における基礎的知見を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種環境条件で処理されたキャベツ、エダマメ、ブロッコリーに関する網羅的遺伝子発現解析解析を実施し、プロファイル解析を行い、処理により特徴的な発現変動を示す遺伝子群の抽出が行われた。また、キャベツとブロッコリーに関しては、網羅的代謝産物解析も実施し、重要成分の動態を明らかにすることができた。これによって、網羅的遺伝子発現解析結果と、網羅的代謝産物解析結果について、相関関係を解析するための準備が整った。 キャベツの光照射に関しては、クロロフィル蓄積に有効な条件の解明と蓄積のモデル化を実施するとともに、クロロフィル合成に係わる遺伝子の特定とその定量発現解析を行い、クロロフィル蓄積との関係性についてもモデル化した。 エダマメに関しては、網羅的遺伝子発現解析と同時に実施した品質評価により、鮮度低下の指標として報告されているスタキオースの生成開始と生成速度が、包装内の酸素濃度に依存することを明らかにした。 遺伝子発現プロファイル、網羅的代謝産物解析等で得られたデータを用いた、相互関係の解析に関しては、メタボロミクスソフトウェア(MS-DIAL)、MATLABのStatistics and Machine Learning ToolboxやBioInfomatics Toolboxを導入して、網羅的データのクレンジング法の検討を行い、数理モデル開発における基礎的知見を収集した。 このように、当初予定していた青果物の品質評価へのオミクス手法の導入と、それによる品質評価の高度化、品質予測技術の実現が射程に入っている。なお、H30年度に解析を予定していた品目のうち、ピーマン、ネギ、ハクサイは予備的検討にとどまっていることを考慮すると、全体としては、概ね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度に解析を予定していたピーマン、ネギ、ハクサイに加えて、他の研究課題で本研究に活用できるデータが取得できているトマトなどを研究対象として追加する。これらの青果物を種々の環境下に保存し、ガス代謝測定、網羅的遺伝子発現解析、網羅的代謝産物解析、重要品質の評価を実施する。網羅的遺伝子発現解析には、マイクロアレイ解析、mRNA-Seqを適用する。網羅的代謝産物解析には、CE、LC、DART、GCの各質量分析(MS)等を適用する。重要品質については、色調やつや等の外観品質(見た目)、万能引張圧縮試験機による力学特性(食感)、HPLCによる主要化学成分(味・機能性)、GC-MSによる香気成分(風味)を指標として定量的な評価を実施するとともに、重要遺伝子の発現変動を定量解析する。さらに、本研究を通じて得られる複数の網羅的データ、品質情報について、相互の関連性を解析し、青果物の品質および代謝に関する数理モデルを構築する。
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