研究課題/領域番号 |
17H01500
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
近藤 直 京都大学, 農学研究科, 教授 (20183353)
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研究分担者 |
鈴木 哲仁 京都大学, 農学研究科, 助教 (00723115)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 精密畜産 / 霜降り / ビタミンA |
研究実績の概要 |
黒毛和種の肥育中の給餌は,ビタミンAを変化させて霜降り牛を生産するが,効率的な肥育には正確なビタミンA濃度(VA)の計測が重要である。本研究はVA計測装置の自動化・高精度化を図り,和牛の効率的な肥育システムを確立することを目的とする。 VAの計測は,飲水中の牛の瞳孔をカメラで撮影して,画像処理によって行う。従来は2台のカメラを用いていたが,当課題では実用化を考慮して,LEDを切り替えることにより,画像から4つの特徴量の①LED照射時の瞳孔収縮,②眼球表面での光反射,③平均瞳孔色,④眼底色を得るようにした。 実験は,京都大学附属牧場と兵庫県立但馬農業高校で開始した。現在,画像データを蓄積するとともに,血液検査でもVAを計測し,今後,4つの画像特徴量からVAを求める多変量解析を行い,VA計測装置としての自動化・高精度化を図る。1牛房に複数の牛が飼育されているので,牛の個体識別が必要である。個体識別には首輪に刺繍した模様をカメラで読み取る方法と,RFIDによる方法を用いている。 各データを入力するデータベースを構築した。データベースには牛の月齢,性,血統等の基本情報,VA,体重等の健康因子,飼料の量,飲水量などの給餌因子,環境条件を蓄積できるものとした。今後,牛の出荷時には品質,収量に関わるデータも入力できるようにして,事故なく高い品質と収量が得られる個体精密管理の実用化を目指した基盤技術の開発を行うことを目指す。精密な肥育のためには,牛の行動の監視を要することがある。本研究では,牛の首輪に加速度等を計測するセンサを取り付け,加速度等のパターンから各行動の分類を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1台のカメラで瞳孔画像から4つの特徴量である①瞳孔収縮,②眼球表面での光反射,③平均瞳孔色,④眼底色を得るようにするためには,新しい瞳孔カメラを製作する必要があった。当初,カメラの製作や画像処理に実績がある企業に依頼する計画であったが,都合により依頼できず,当課題担当者らによって製作することにした。新しい瞳孔カメラは,眼底色も得られるようにするため,ハーフミラーを用いた光学系とし,LEDによる照明光と瞳孔からの反射光を同軸とする光学系となっている。また,埃が多い牛舎で使用するため,カメラに埃が入らないようカメラ,ハーフミラー,,LED等をケースに入れ,撮影用のガラス窓を通して撮影する構造になっている。このため,ハーフミラーやガラス窓,カメラケース内面での反射による迷光が生じやすく,迷光対策が必要である。これらの対策は,慎重な光学設計と試行錯誤を要し,カメラの完成までに時間を要した。 このため,牛舎に設置して画像データの収集を開始したのが平成30年4月となり,現在も画像データの収集を続けている。
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今後の研究の推進方策 |
現在行っている瞳孔画像の収集を続け,多変量解析によって瞳孔画像の特徴量から精度良くVAを推定できるようにする。データベースには,血統,月齢,性などの基本情報,給餌量,飲水量等のデータを蓄積するとともに,牛の出荷時には,枝肉の品質,収量等のデータも入力できるようにする。これらの結果をもとに,肉用牛の「飼料摂取量」と「健康・品質・収量」との関係を明らかにするとともに,得られたデータから畜産経営,飼料効率の改善,必要とされる品質や収量を得ることを目指した精密畜産に活用できるようにする。
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