研究課題/領域番号 |
17H01506
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
岩野 英知 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (60382488)
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研究分担者 |
樋口 豪紀 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (00305905)
岩崎 智仁 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (30305908)
鈴木 一由 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (30339296)
藤木 純平 酪農学園大学, 獣医学群, 助教 (30805114)
橋口 周平 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (40295275)
萩原 克郎 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (50295896)
前原 誠也 酪農学園大学, 獣医学群, 准教授 (50438363)
村田 亮 酪農学園大学, 獣医学群, 講師 (50590311)
山下 和人 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (60244844)
臼井 優 酪農学園大学, 獣医学群, 准教授 (60639540)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ファージセラピー / バクテリオファージ / MRSA / 黄色ブドウ球菌 / 薬剤耐性菌 / 耐性化 / 臨床試験 |
研究実績の概要 |
本研究では、薬剤耐性化が進む細菌感染症に対して、細菌にのみ感染し死滅させるバクテリオファージを用いた次世代型のファージ療法を開発する。薬剤耐性化が進む細菌感染症において、ファージを使用したファージ療法への期待は大きくなっているが、その治療応用においては検討すべき課題が多い。本年度は、当初計画していた「犬膿皮症へのファージセラピー応用に向けた検証」については、ファージとファージ由来エンドライシンにより病態のコントロールが可能ではないかという結論にいたり、論文公表を行った。また、「ウシ子宮内膜炎へのファージセラピー応用に向けた検証について」もファージセラピーの効果が確認され論文執筆中である。さらに、本年度は、子宮内膜炎のマウスモデルを用いて、ファージによる子宮内膜炎への発症予防効果を検証する。「ファージの攻撃によりファージ耐性化を獲得した宿主細菌の変化 ~病原性、薬剤感受性におけるtrade-off~」について検証をおこなった。その結果以下の成果を得た。 ①MRSAに対してファージによって耐性化した細菌株を複数分離した。 ②得られた細菌株は、病原性、薬剤感受性が変化していることが明らかとなった。 ③上記表現系に関わると考えられるゲノム変異を複数同定した。 以上のことから、病原細菌は、ファージによる持続的な感染に伴い、ファージから逃れ耐性化することができるが、その一方で何らかの代償を払うtrade-offがあり、病原性や薬剤感受性が変化しうることが明らかとなった。つまりファージに耐性化することは、我々にとって有利に働くとも考えることができる。次年度は、その詳細なメカニズムについて検証していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、イヌ膿皮症、ウシ子宮内膜炎を対象としたファージセラピーの効果が確認され、それぞれ論文公表、論文執筆へ向かっている。また、ファージ耐性化について詳細なメカニズムを明らかに捉えつつある。よって、おおむね順調に研究は進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの成果を論文公表していくこととともに、以下の2点について、推進して行く予定である。 ①ファージの攻撃によりファージ耐性化を獲得した宿主細菌の変化 ~病原性、薬剤感受性におけるtrade-off~ ファージ耐性化したMRSAのゲノム変化の方向性とそれによりもたらされる表現系の変化を詳細に精査する。そこから、ファージ耐性化がもたらす病原性の変化や薬剤感受性の変化により、我々にもたらされるメリットを明らかにすることで、ファージセラピーを応用する意義を問いただすことができると考えている。 ②イヌ、ネコにおけるファージセラピーの臨床試験 これまでの成果からファージセラピーの効果を、実際の臨床例に応用することで、さらに臨床応用に近づくための貴重なデータが得られると考えている。現在、農水省に問いあわせ確認し、大学内での委員会の承認を得て、臨床試験をスタートする準備が整っている。日本初の臨床試験を行い、ファージセラピーの臨床応用への布石としたい。
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