研究課題
食物アレルギーは「食の安全・安心」を揺るがす社会問題になっている。しかし、その発症や進行、寛解に関する基礎研究は進んでおらず、管理・治療法の開発は遅れている。申請者は、皮膚の肥満細胞が産生するプロスタグランジンD2(PGD2)が、抗原の吸収から抗体産生、症状の発現、免疫寛容までを制御する、食物アレルギー反応の成立に必要不可欠な分子であることを示す 知見を得た。本研究では、食物アレルギーにおけるPGD2の役割の全容を解明し、これを土台とした管理・治療法の提案を行う。具体的には、食物アレルギーモデルマウスの皮膚や腸管において、①PGD2-DPシグナルが体内に侵入してきた抗原の分解や症 状を抑制する機構、②PGD2-CRTH2シグナルがIgE産生を促進して、③免疫寛容の誘導を抑制する機構、を明らかにする。また④PGD2産生機構を 解明し、これを応用した⑤新しい食物アレルギー管理・治療方法の提案を行う。2018年度 は、④以外の項目について研究を進めた。 ①PGD2-DPシグナルが抗原分解を促進し、症状を抑制する機構として、抗原(毒)投与に反応したPGD2産生が、血管の透過性をおさて、抗原の吸収を抑えることこと。さらに抗原(毒)が引き起こす溶血をPGD2が抑制することを明らかにした。②PGD2-CRTH2シグナルがIgE産生を促進する機構の解明として、抗原刺激よるPGD2産生が、樹状細胞の遊走を促進することを明らかにした。③PGD2シグナルによる免疫寛容調節機構の解明と応用として、PGD2シグナルが抗原に対する免疫寛容を抑制することを明らかにできた。 ⑤ω3脂肪酸による治療効果とその作用機序を明らかにすることを目的に、ω3脂肪酸代謝物の投与が炎症をおさえることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
2018年度に予定していた4項目すべての仮説に対する証明(実験)を終了することができた。途中マウス(オメガ3脂肪酸を合成できるFAT1)の繁殖が遅延したが、その後順調に繁殖を再開・継続し、実験に用いることができた。
本研究では、食物アレルギーにおけるPGD2の役割の全容を解明し、これを土台とした管理・治療法の提案を行うことを目的とする。実験5項目すべてにおいて当初予定した研究が完了するように、今後も研究を進めていく。研究計画の変更や、遂行する上での問題点は現時点でない。
すべて 2018 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 8件、 招待講演 4件) 備考 (1件) 産業財産権 (2件)
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