研究課題/領域番号 |
17H01510
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
徳田 岳 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (90322750)
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研究分担者 |
木原 久美子 熊本高等専門学校, 生物化学システム工学科, 准教授 (50622916)
北出 理 茨城大学, 理学部, 教授 (80302321)
本郷 裕一 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (90392117)
福田 真嗣 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任准教授 (80435677)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 昆虫 / 寄生・共生 / 木質代謝 |
研究実績の概要 |
本年度は韓国五台山国立公園および米国ジョージア州Black Rock Mountains州立公園において、キゴキブリ(Cryptocercus kyebangensisおよびC. punctulatus)のサンプリングを行った。持ち帰ったサンプルについて、韓国産キゴキブリの原生生物叢の解析と両種のキゴキブリについて後腸内代謝物の測定を実施した。 キゴキブリ属にはこれまで北米東部のC. punctulatusと北米西部のC. clevelandi、ロシア東部のC. relictus から共生原生生物が記載されている。韓国産のキゴキブリから調整した標本の検鏡の結果、本種の後腸にはBarbulanympha属、Trichonympha属、Eucomonympha属、Leptospironympha属、Saccinobaculus属、Notila属、Oxymonas属の原生生物が共生していることが明らかになった。原生生物の属組成から判断すれば、本種の原生生物組成は北米の2種とは比較的大きく異なり、ロシア東部のC. relictusに近いことが明らかとなった。一般的にキゴキブリ属の後腸内に分布する原生生物の種組成は宿主種に特異的であると考えられているが、採集したキゴキブリのコロニーによっては原生生物組成が大きく異なるものが含まれており、五台山国立公園に定説とは異なり複数種のキゴキブリが分布する可能性も検討する必要があると考えられた。 また、C. clevelandiおよびC. kyebangensisの後腸全体からの抽出物を調整し、それぞれn=3としてCE-MSを用いたメタボローム解析を行った。本結果については現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのところ当初の予定通り、アメリカ及び韓国よりキゴキブリを採集し実験に用いることができた。韓国の原生生物叢の解析についてはほぼ予定通り進んでおり、大凡の原生生物組成を把握することができた。しかし、通常原生生物組成は主特異的であるのも関わらず、予想に反してコロニーによっては原生生物組成が異なることが明らかとなった。この原生生物組成はC. relictusから報告されたものと非常に近く、韓国のカウンターパートであるParkら(2004)が韓国南部からC. relictusを記載していることを考え合わせると、韓国北部の五台山国立公園にはこれまでC. kyebangensisの記載しかないが、実際には2種のキゴキブリが分布している可能性を視野に入れて今後検討していく必要があると考えられた。 また、代謝物測定については後腸全体の代謝物測定まで実施することができた。しかし、原生生物個別の代謝物測定系の構築には当初の想定よりも時間を要している。原生生物個別の代謝物の測定系の構築は計画段階から平成30年度まで実施することを予定していたため、全体としては概ね順調に研究が進展していると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
キゴキブリの腸内微生物叢は長期飼育によって変化してしまうことが予想されるため、本年度も適切な時期に韓国及びアメリカにおいてサンプリングを実施する。特に韓国のキゴキブリについて原生生物叢の解析や代謝物測定用のサンプル調整の際には、予め宿主のmtDNA配列(COII配列)を確認し、用いた種がC. kyebangensisであるのかC. relictusであるのか確認しながら解析を進める。得られた結果に基づき、原生生物種別での代謝物測定系を立ち上げる。
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