研究課題/領域番号 |
17H01510
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
徳田 岳 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (90322750)
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研究分担者 |
木原 久美子 熊本高等専門学校, 生物化学システム工学科, 准教授 (50622916)
北出 理 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (80302321)
福田 真嗣 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任准教授 (80435677)
本郷 裕一 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (90392117)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 昆虫 / 寄生・共生 / 木質代謝 |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度に引き続き、韓国産キゴキブリ及び米国産キゴキブリについてCE-MSによる後腸内代謝物の解析を行った。その結果、209代謝物が同定され、全体として地域集団間において後腸内代謝物量に明らかな差異が認められた。特に北米産キゴキブリと韓国産キゴキブリとの間で細胞内共生細菌が生産できる必須アミノ酸のうち、韓国産キゴキブリの細胞内共生細菌のみが生産可能なアミノ酸については、韓国産キゴキブリよりも米国産キゴキブリの後腸内により多く存在する傾向が認められた。この結果は両者で進化途上に後腸内または原生生物内に獲得した細菌叢の違いを反映していることが期待され、結果的に細胞内共生細菌のゲノム縮小進化に影響を与えた可能性も考えられた。その他のアミノ酸量の違いについては、これらの地域間で明らかな傾向は認められなかった。 また、本年度は当初、米国産キゴキブリについてサンプリングと原生生物の代謝物定量を実施し、次年度に韓国産キゴキブリを用いて同様の実験を行う予定であったが、日本側とカウンターパートとの間の日程的な都合等によりサンプリングの順序を入れ替えることにした。したがって、本年度は先に韓国産キゴキブリのサンプリングと解析用サンプル調整を実施した。韓国産キゴキブリの原生生物の同定についても昨年度から継続的に実施し、これまでに11属15種の存在を同定することができた。本結果に基づき、生細胞で同定可能な種について、マイクロキャピラリーを用いたマニピュレーションを実施した。同定された細胞の大きさに基づき、約100細胞を1回の代謝物分析に用いると想定して、繰り返し解析用のサンプル調整を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、後腸全体における代謝物測定は本年度までに終了させる予定であったが、予想以上に腸内代謝物量の個体差が大きく、地域個体間で各代謝物の量比に明確な傾向は認められたものの、具体的な有意差まで導くには至らなかった。そのため、今後、明確な結果を得るためにはさらにサンプル数を増やす必要があると考えられた。
また、原生生物の解析については、当初米国産キゴキブリを用いる予定にしていたが、野外採集に当たってカウンターパートとの都合等が合わず、年度内の実施は各種許可申請等の取得にも支障が出ることが予想されたため、次年度実施する予定であった韓国産キゴキブリの採集とサンプル調整を本年度実施し、次年度に米国産キゴキブリの採集とサンプル調整を実施することにした。また、実際に計測した原生生物のサイズに基づいて、代謝物解析に必要な細胞数を見積もったところ、当初予想していた細胞数よりも多くの細胞をマニピュレーターによって集める必要があることが明らかとなった。後腸代謝物測定の結果から推定される個体差のばらつきまで考慮すると、十分な解析を行うためには当初の予定よりも多くのサンプルを調整する必要があると判断されたため、このことも当初の予定よりも時間を要する一因となっている。
以上の事情から、当初の計画よりも研究計画に若干の遅れが出ていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
後腸全体にかかる代謝物解析については、サンプル数を増やして次年度も引き続き実施する。韓国産キゴキブリの原生生物単離と代謝物解析用のサンプル調整も、次年度当初に引き続き実施する。また、本年度に米国産に代えて韓国産キゴキブリを用いたことから、次年度中盤以降に米国産キゴキブリのサンプリングを実施するとともに、後腸全体および共生原生生物の代謝物解析用のサンプル調整を実施することで、当初次年度終末までに終わらせることを予定していた両集団間の代謝物の解析に目途をつける。
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