<黄川田グループ> 令和2年度の主な成果として、新たなネムリユスリカゲノムデータベースの構築があげられる。2014年に報告したドラフトゲノムデータを基盤に、PccBioを用いたロングリードシーケンスやHi-Cによるスキャホールディングなどのデータを用いてをアセンブルを深化させた結果、コンティグおよびスキャホールドのN50/L50が大幅に改善され、染色体レベル(n=4)のゲノムデータを得ることができた。染色体の間で、乾燥誘導性遺伝子が偏って座乗していることも明らかとなった。以上の成果をまとめて、論文投稿を進めている。また、ネムリユスリカの乾燥耐性に関連した基盤的なオミクスデータとして、メタボローム解析結果をPNAS誌に発表したa
<舟橋グループ> 令和2年度は、ネムリユスリカ幼虫における乾燥時の詳細な時系列RNA-seqデータを用いた遺伝子制御ネットワーク推定を完了した。この遺伝子制御ネットワーク推定により、乾燥耐性に関わる遺伝子群全体の発現調節にはNF-YAとSix4という二つの転写因子が強く関わることが示唆された。これら核内ゲノムに対する遺伝子制御機構の解析に加え、本年度はミトコンドリアゲノムへの遺伝子制御メカニズムの解析も並列して行った。これにより前年度に発見した再水和時点におけるミトコンドリアゲノムにコードされた遺伝子の過剰な遺伝子発現を誘導する可能性のある転写因子としてhomeotic proteinであるcaudalおよびhomeobox proteinでextradenticleの二つの転写因子が主要な役割を担う可能性を新規に示唆した。この結果は、再水和時における能動的な生き返りを制御する転写因子の発見であるといえ、これまでに注目されてきた乾燥における死の回避とは別視点である乾燥耐性における重要なプロセスである生き返りのメカニズム解明に資するものである。
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